筋疾患分野|先天性筋無力症候群(平成23年度)
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1. 概要 | |
神経筋接合部分子の先天的な欠損ならびに機能異常により、筋力低下や易疲労性を来す疾患である。アセチルコリン受容体が欠損をする終板アセチルコリン受容体欠損症、アセチルコリン受容体のイオンチャンネルの開口時間が異常延長するスローチャンネル症候群、異常短縮するファーストチャンネル症候群、骨格筋ナトリウムチャンネルの開口不全を起こすナトリウムチャンネル筋無力症、アセチルコリン分解酵素が欠損をする終板アセチルコリンエステラーゼ欠損症、神経終末のアセチルコリン再合成酵素が欠損をする発作性無呼吸を伴う先天性筋無力症に分類される。 | |
2. 疫学 | |
疫学研究は行われていないが、確定診断例は世界で推定600例、日本では13例。ただし診断が困難な症例が多いために世界中で多くの患者が未診断の状態であると推定される。 | |
3. 原因 | |
神経筋接合部で機能をする多数の分子のうちのひとつの分子をコードする遺伝子の配列が正常者と異なることによって、十分な量の分子を作ることができなかったり、その分子が本来持つ機能を果たせなくなることが原因である。原因となる欠損分子には、アセチルコリン受容体α・β・δ・εの各種サブユニット、ラプシン(rapsyn)、筋特異的受容体チロシンキナーゼ(MuSK)、Dok-7、グルタミン・フルクトース6リン酸・トランスアミナーゼ1(GFPT1)、コラーゲンQ、アグリン(agrin)、β2ラミニン(laminin β2)、コリンアセチルトランフェラーゼ、骨格筋ナトリウムチャンネルの13種類が知られている。スローチャンネル症候群のみが常染色体優性遺伝形式で、他は常染色体劣性遺伝である。 | |
4. 症状 | |
多くの例において、出生直後に泣く力が弱かったり、母乳を吸う力が弱かったりという軽度の筋力低下から、呼吸困難のために人工呼吸器が必要になるという重度の筋力低下まで認められる。一旦これらの症状が軽快することも多く、幼少児期に再度、持続的な筋力低下や、運動するにつれて筋力が弱くなる筋無力症状が出る。筋無力症状による筋力低下の日内変動が明らかではなく、むしろ日ごとに筋力が異なる日差変動が認められることも多い。特にスローチャンネル症候群においては出生時の筋無力のエピソードを全く認めず成人発症のことも多い。また、口蓋の位置が高かったり、両耳の付け根が高かったりという顔面小奇形や、四肢の筋萎縮を認めることも多い。 | |
5. 合併症 | |
呼吸筋の筋力低下や易疲労性に伴う呼吸困難、嚥下障害による誤嚥性肺炎、脊柱筋の脱力による脊柱側湾などがある。 | |
6. 治療法 | |
病態に応じて有効な薬剤が存在するものがある。終板アセチルコリン受容体欠損症やファーストチャンネル症候群に対して抗コリンエステラーゼ剤や3,4-ジアミノピリジン。スローチャンネル症候群に対してキニジンやフルオキセチン。ナトリウムチャンネル筋無力症に対してアセタゾラミド。 | |
7. 研究班 | |
先天性筋無力症候群の診断・病態・治療法開発研究 | |