内分泌疾患分野|遺伝性女性化乳房症(平成23年度)
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1. 概要 | |
女性化乳房症は、男性に乳房の発育を認める疾患である。加齢や肝疾患・甲状腺中毒症・薬剤服用などにより後天的に発生する続発性女性化乳房症と、小児期より発症し先天性ないし遺伝性と考えられる遺伝性女性化乳房症とがある。 | |
2. 疫学 | |
推定に使えるデーターはないが、報告は散発的で疾患頻度は低いと推定される。 | |
3. 原因 | |
遺伝性女性化乳房症の原因は長く不明であったが、2003年にエストロゲン合成酵素遺伝子(CYP19A1)のプロモーター領域の染色体微細逆位が原因となった2家系が報告された。染色体逆位により、CYP19A1の反対鎖上の別遺伝子のプロモーターがCYP19A1上流に移動し、あらたにCYPA1のプロモーターとして働くようになったことが発現亢進の原因であった。これにより、常染色体優性の遺伝形式を示す。その後、同様の微細逆位が原因となっている家系のほか、微細染色体欠失が原因と推定される家系、CYP19A1のメチル化異常が原因と推定される症例が報告されている。 | |
4. 症状 | |
エストロゲンが持続的に高値となるため、男性では再発性の乳房の増大、低身長、性欲の低下、精巣機能の低下が生じる。本症の女性では、巨大乳房、低身長、不正性器出血などが発症する。 | |
5. 合併症 | |
高度の女性化乳房は、男性患者のQOLを著しく損なう。精神的な問題が発生し、社会的活動も制限される。乳房縮小手術を受けた場合でも、術後に適切な補助療法が行われないと女性化乳房が再発する。また、性欲の低下などもみられる。女性では、高エストロゲン血症のために、乳癌や子宮体癌が発生することが懸念される。不妊症の原因となることもある。 | |
6. 治療法 | |
従来は手術療法(乳房縮小術)が唯一の治療法であった。しかし、理論的にはアロマターゼ阻害剤が奏功することから、一部で試みられている。低身長に対しては有効であり、手術後の再発予防にも有効であることが確かめられつつある。 | |
7. 研究班 | |
遺伝性女性化乳房(アロマターゼ過剰症)の実態把握と診断基準の作成に関する研究班 | |