免疫系疾患分野|ミクリッツ病およびIgG4関連疾患(平成23年度)

みくりっつびょうおよびIgG4かんれんしっかん
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1. 概要

涙腺・唾液腺の持続性腫脹を呈する一群。従来、シェーグレン症候群と診断されていた患者のなかにみられる場合がある。シェーグレン症候群とは異なり、高IgG4血症を呈すること、口腔乾燥症状や涙液低下などシェーグレン症候群に似た症状を呈するもののステロイドに対する治療反応性が良好で腺機能の良好な回復が見られることが特徴である。高IgG4血症を呈するIgG4関連疾患:自己免疫性膵炎、自己免疫性下垂体炎、リーデル甲状腺炎、間質性肺炎、間質性腎炎、後腹膜線維症などをしばしば合併する。

2. 疫学

われわれが本邦におけるミクリッツ病および全身性IgG4関連疾患の地域性(偏り、分布)を明らかにするために、日本内科学会地方会演題検索システムと日本消化器病学会支部例会演題検索システムを利用し、これらのデータベース(各162例、各317例)と本研究班のデータベース(82例)と比較し、国内における疫学的解析を実施している。ミクリッツ病や全身性IgG4関連疾患は当初、北海道、北陸、甲信越などの東日本に多い印象であったが、解析により全国均一に症例が報告されていることが判明した。またかなりの数の症例が、この疾患に対する認識が乏しいために見過ごされている可能性が示唆されている。サブ解析では、合併症に悪性腫瘍(固形癌)も多いことが判明し、臨床の現場で喚起される事項として挙げられる。また平成22年度にわれわれが行った全国調査において全国に1千人を超える患者がいると推定された。患者の4割以上にIgG4関連疾患に合併を認めており、ミクリッツ病診断の際には全身検索が必要であると考えられる。今後世界的な規模での大規模疫学調査によって世界的な分布、有病率等を明らかにしていく必要がある。

3. 原因

IgG4が病態に関与しているものと推察されるが原因は国内外において明らかにされておらず、診断法も確立していない。われわれが行った治療前後のミクリッツ病患者のリンパ球におけるDNAアレイ解析の結果、アレルギーの関与が示唆されるものの、発病に直接関与する分子や発病の機序は明らかになっていない。

4. 症状

唾液腺、耳下腺、顎下腺、舌下腺、涙腺の無痛性、対称性の腫脹および乾燥症状。その他合併したIgG4関連疾患による。従来、シェーグレン症候群と診断されていた患者のなかにみられる涙腺・唾液腺の持続性腫脹を呈する一群。口腔内乾燥症状や涙液低下などシェーグレン症候群に似た症状を呈するもののステロイドに対する治療反応性が良好で腺機能の回復が見られることが特徴的である。以下にあげる高IgG4血症を呈するIgG4関連疾患をしばしば合併する。

5. 合併症

自己免疫性膵炎、自己免疫性下垂体炎、リーデル甲状腺炎、間質性肺炎、間質性腎炎、後腹膜線維症など

6. 治療法

シェーグレン症候群と異なり、ステロイド治療により、腺腫脹が速やかに消退し、腺分泌能の改善が認められることが明らかになっており、ミクリッツ病の治療はステロイド剤が主体となる。現在のところ重症度と投与すべきステロイドの量を定めた治療指針はいまだ無く世界的な治療指針を定める必要がある。札幌医科大学 第一内科では、ミクリッツ病の腺腫脹に対して、臓器障害を伴わない場合はprednisolone 0.6 mg/kgすなわちprednisolone 30~40 mg/日から開始する。複数の臓器障害を伴う場合は0.8 mg/kgまでの増量を考慮し、初期量を4週間継続する。ステロイド剤を中止した例では腺腫脹の再燃および血清IgG4値の増加が見られることから、prednisolone を10%ずつ2週間ごとに減量していき、5~7.5 mg/日程度の維持量が必要であると考える。またステロイド減量による再発もみられ減量法およびステロイド維持量に関しても世界的治療指針を確立し、認知・普及を行う必要がある。またアレルギーの関与が指摘されているためステロイド以外に免疫抑制剤などが奏功する可能性もあり今後検討が必要である。

7. 研究班

ミクリッツ病およびIgG4関連疾患の診断および治療方法の更なる推進に関する研究