代謝疾患|ビオチン代謝異常症(平成23年度)

びおちんたいしゃいじょうしょう
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1. 概要

ビオチンは4種のカルボキラーゼの補酵素であり、ビオチンが体内で欠乏したり、カルボキシラーゼへの取り込みが障害されると、複数の代謝経路に影響が出て、マルチプルカルボキシラーゼ欠損症と呼ばれる病態を示す。酸性血症、けいれん、呼吸障害、皮膚炎症状などが主な症状である。

2. 疫学

ビオチン先天性代謝異常症は、現在まで、日本国内で25家系の確定診断が行われており、患者数は、最大限50名以下と思われる。摂取不足による栄養性ビオチン欠乏症は、この10年間で100例近い発症があると推定される。

3. 原因

マルチプルカルボキシラーゼ欠損症を示す病態は、稀な先天性酵素欠損症と栄養性ビオチン欠乏症に大別される。前者の原因としてホロカルボキシラーゼ合成酵素(HLCS)欠損症、ビオチニダーゼ欠損症、ビオチントランスポーター欠損症が知られており、後者の原因として、現在、特に問題なのが、乳幼児における食物アレルギー治療用のペプチドミルク等の長期摂取によるものである。

4. 症状

HLCS欠損症は重症型が多く、新生児期から、嘔吐、哺乳障害、嗜眠、筋緊張低下、呼吸障害を示す。生化学検査では、酸性血症、高乳酸血症、高アンモニア血症がみられ、特徴的な尿中有機酸排泄が認められる。皮膚炎も特徴のある症状である。ビオチニダーゼ欠損症は乳児期に、筋緊張低下、けいれんなどで気づかれることが多い。栄養性ビオチン欠乏症では、ビオチニダーゼの症状や、皮膚炎、尿中の有機酸排泄異常で気づかれることが多い。

5. 合併症

主な症状に加えて、脱毛、皮膚の感染症、全身感染症を合併しやすい。感染症に罹患すると、急激に症状が悪化し、適切な治療をしないと、命に関わる事がある。ビオチンの治療効果が十分でないと発達遅延が認められることがある。ビオチニダーゼ欠損症では、難聴が起こることが特徴的である。

6. 治療法

多くの症例では、ビオチンを一日あたり5mgから20mgを、経口もしくは、経静脈的に投与することで、症状が改善する。ビオチン投与開始後、軽症例では、全く無症状の経過をとるものもいるが、ビオチンに対する反応が悪く、乳児期に死亡する場合もある。酸性血症に対しては、一般的な酸性血症の治療を行う。

7. 研究班

ビオチン代謝異常症の鑑別診断法と治療方法研究班
代表者 鈴木洋一 千葉大学大学院 公衆衛生学