神経系疾患分野|先天性無痛症(平成23年度)

せんてんせいむつうしょう
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1. 概要

先天性無痛症は遺伝性感覚・自律神経ニューロパチー(HSAN)に属する疾患で、このうち4型(先天性無痛無汗症:Congenital Insensitivity to Pain with Anhidrosis:CIPA)と5型(先天性無痛症:Congenital Insensitivity to Pain:CIP)が相当する。全身の温痛覚消失を主徴とする。CIPAでは全身の発汗低下を合併し、種々の程度の知能低下を合併することがある。

2. 疫学

CIPAは日本に多いとされ、100名上の患者がいると考えられる。CIPはCIPAに比べ患者数が少ない。

3. 原因

CIPA、CIPのいずれも常染色体劣性遺伝形式を示す。CIPAはNTRK1(Neuropathic Tyrosine Kinase Receptor Type 1)の遺伝子変異、CIPはNGFB(Nerve Growth Factor, Beta subunit)の遺伝子変異による疾患であることが判明している。しかしこれらの遺伝子変異が症状に結びつく詳細なメカニズムは判明していない。

4. 症状

CIPでは、四肢優位の(温)痛覚の消失を示す。CIPAでは、全身の温痛覚消失、発汗の低下または消失、精神発達遅滞を示す。これらの症状により、次に示す、様々な合併症を生じる。

5. 合併症

温痛覚の消失により骨折・脱臼・熱傷などの外傷の診断が遅れる。このためシャルコー関節を発症したり、反復性脱臼(股関節、肩関節)を生じる。これは移動能力の低下につながり、電動車椅子での移動を必要としている患者も多い。自傷行為による手指の損傷(骨髄炎を含む)、口唇や舌の損傷を示すこともある。歯の障害や角膜の障害も知られている。CIPAでは発汗の低下があり、体温調節に障害があるため、高体温、低体温を生じやすい。けいれん重積や熱中症、急性脳症で重篤な後遺症を残したり死亡する危険もある。

6. 治療法

根本的治療法はなく、対症治療、日常生活上でのケアにとどまる。外傷の予防に装具や環境整備、口唇・舌の損傷に対しては保護プレートが有効である。外傷に対しては通常の治療を行うが、シャルコー関節や反復性脱臼に至った場合、有効な治療法はない。車椅子等による荷重の制限を行う場合も多い。CIPAでは体温コントロールが重要であり、環境整備のほか、高体温を防ぐためのウエアも工夫されている。

7. 研究班

先天性無痛症の診断・評価および治療・ケア指針作成のための研究班