奇形症候群分野|Gorlin症候群(ゴーリン症候群)(平成23年度)
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1. 概要 | |
Gorlin症候群(ゴーリン症候群)は1960年Gorlin RJによって報告された発達上の奇形と遺伝性高発癌性を併せ持つ神経皮膚症候群である。別名母斑基底細胞癌症候群、基底細胞母斑症候群などとも呼ばれる。発達上の奇形には手掌・足底皮膚小陥凹、二分肋骨ないし癒合肋骨、椎骨異常、顎骨嚢胞、大脳鎌石灰化があり、発癌には基底細胞癌、髄芽腫、卵巣腫瘍の発生がよく知られている。またGorlin症候群では多量の放射線照射に伴う基底細胞癌の発症が知られており早期診断、早期治療が望ましいが、症状が全身にわたるため診療各科を回り診断が遅れる傾向がある。 | |
2. 疫学 | |
アメリカ人口では27,000人に1人の有病率が示されている。日本国内では、2009年の厚生労働省難治性疾患克服研究事業の中でGorlin症候群の全国一次調査が行われ、311人の患者が確認された。引き続き二次調査が行われ、現在我が国における有病率を解析中である。 | |
3. 原因 | |
Gorlin症候群の責任遺伝子はPTCH1であり、すでに100以上の遺伝子変異が報告されている。多くは挿入・欠失変異であり、PTCH1のハプロ不全で発症するが、現在まで遺伝子型と表現型の関連は知られていない。PTCH1はがん抑制遺伝子に分類されており、加齢や紫外線、放射線照射等による組織のLoss of heterozygosity (LOH)により、基底細胞癌等の腫瘍が発生する。 | |
4. 症状 | |
発達上の奇形には、手掌・足底皮膚小陥凹、二分肋骨ないし癒合肋骨、椎骨異常、顎骨嚢胞、大脳鎌石灰化があり、発癌には基底細胞癌、髄芽腫、卵巣腫瘍の発生がよく知られている。それぞれの症状ごとに好発年令があるため、経時的に診察して早期診断、早期発見をすることが望ましい。 | |
5. 合併症 | |
加齢と共に多くの癌腫が発生する。上述の基底細胞癌、髄芽腫、卵巣腫瘍以外にも、心臓線維腫、脂肪腫、髄膜腫がある。 | |
6. 治療法 | |
根本的治療はない。基本的に対症的であり、症状に応じた治療を選択する。20歳過ぎに好発する基底細胞癌には外科療法と化学療法が行われる。近年、基底細胞癌と髄芽腫に対する分子標的治療薬が開発され、現在米国で臨床試験が進行中である。今後はこうした新薬を中心とした新しい臨床治療の発展が期待される。 | |
7. 研究班 | |
Gorlin症候群の病態解明と治療法確立のための臨床的研究 | |