循環器系疾患分野|Brugada症候群(ブルガダ症候群)(平成23年度)

ぶるがだしょうこうぐん
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1. 概要

1992年にブルガダらによって報告された、12誘導心電図の胸部V1-V3誘導でcoved(弓状)型(タイプ1)もしくはsaddle back(馬鞍)型(タイプ2)のST上昇という特徴的な心電図所見を呈し、心室細動による突然死を来しうる疾患群である。日本人をはじめとするアジア人に比較的多く認められ、成人男性に多く認められる。心停止蘇生例や心室細動、失神の既往のある群を症候性ブルガダ症候群、全く症状を有しない群を無症候性ブルガダ症候群として捉えることが一般的である。

2. 疫学

典型的なブルガダ症候群(タイプ1)は全人口の0.05~0.2%程度と報告されており、アジア人に多く、成人男性に圧倒的に多い(男女比9:1)。多くは無症候性と考えられるが、無症候性ブルガダ症候群では突然死などのイベント発生率が年0.3~4%であるのに対し、心停止や心室細動の既往のある症候性ブルガダ症候群はイベント発生率が年10~15%と報告されている。

3. 原因

ブルガダ症候群の約20%の症例ではSCN5A(ナトリウムチャネル)遺伝子の変異が見出され、さらにカルシウムチャネルなど7種類の遺伝子の関与が報告されており、遺伝的チャンネル病が背景にあると考えられる。右室流出路を中心にした貫壁性の再分極異常がその心電図異常の原因と考えられ、心室細動の発生について心外膜側と心内膜側の拡張期の電位差による局所の興奮旋回(リエントリー:phase 2 reentry)によると考えられている。

4. 症状

特に夜間に突然生じる心停止・心室細動が主な症状であり、以前我が国ではぽっくり病として知られていた疾患群である。症候性ブルガダ症候群では、突然死が年約10%みられるのに対し、無症候性ブルガダ症候群では心停止発作をきたす頻度は年1%未満という報告が多い。症候性ブルガダ症候群や家族歴を有する症例では植込み型除細動器(ICD)治療が必要であるが、無症候性ブルガダ症候群では全く無症状のまま経過する症例が多いと考えられている。

5. 合併症

典型的な心電図異常を認めるのみで、特に背景となる疾患や心臓病はなく、特発性心室細動による心停止や突然死を来たす可能性がある。心房細動、洞不全症候群、起立性低血圧など、他の疾患との合併例の報告、あるいは不整脈源性右室心筋症とのオーバーラップの報告があり、単一の疾患群ではない可能性も考えられる。

6. 治療法

心停止発作の予防として、シロスタゾールの内服や、キニジンやジソピラミドの少量内服の試みなどがあるが、抗不整脈薬によりかえって発作が頻発する可能性が高く、慎重な投与を要する。突然死の予防に対してはICD植え込みによる発作時の除細動のみが確実な方法である。日本循環器学会のガイドラインによると、ICDの適応は心停止・心室細動既往例はクラスⅠ(有効であると広く認識されるレベル)、coved型のブルガダ症候群のうち、失神または突然死の家族歴があり、電気生理検査で心室細動が誘発された例はクラスⅡa(有効である可能性が高いレベル)となっている。

7. 研究班

Brugada症候群における調査研究班