循環器系疾患分野|進行性心臓伝導障害(平成23年度)

しんこうせいしんぞうでんどうしょうがい
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1. 概要

進行性心臓伝導障害(英語略名PCCD)は、進行性の房室ブロック・脚ブロックという心電図所見を特徴とし、心臓刺激伝導系の線維変性によって突然死をきたす稀な致死性不整脈である。進行性家族性心臓ブロックあるいはレネグレ・レブ病とも呼ばれる。

2. 疫学

進行性心臓伝導障害は極めてまれな疾患であり、正確な有病率は把握できていない。本邦登録50症例(男28人、女22人)、平均51±23歳で、10才代と50才代に2つのピークを持つ好発年齢分布を示した。また、新潟県成人病予防協会の基本健診データでは、一般人口132,111人(平均年齢58±11歳、男性39,541人)は平均10.45±2.8年の経過観察で2,611人(2.0%)が心電図PQ延長、8517人(6.5%)が右脚ブロック、850人(0.6%)が左脚ブロック、88人(0.07%)が完全房室ブロックを発症した。

3. 原因

進行性心臓伝導障害の臨床像は、進行性のものから若年発症の重症型まで多様であり、単一の病因では説明できない。これまで、進行性心臓伝導障害の一部の症例に心筋ナトリウムチャネル遺伝子や非特異的カチオンチャネルの遺伝子変異が報告されているが、多くの症例の分子病態は不明である。本邦39家系50症例の遺伝子解析によって、心筋ナトリウムチャネル遺伝子9個(10症例)、心筋遅延整流K電流遺伝子1個(2症例)、ラミンA/C遺伝子9症例、コネキシン40遺伝子1個(2症例)の変異が同定された。

4. 症状

軽症の場合は無症状だが、伝導障害の進行とともに、めまい・失神などの症状が出現することがある。さらに進行すると不整脈が出現し、場合によって突然死する。

5. 合併症

特異的なものはない。なお、心筋症や虚血性心疾患などの基礎心疾患の存在は、進行性心臓伝導障害の除外診断項目となる。

6. 治療法

基本的に体内式ペースメーカー植え込み術である。場合によっては、植え込み型除細動器の適応も考慮する。

7. 研究班

進行性心臓伝導障害研究班