その他(神経系疾患、内分泌疾患、眼科疾患、腎の腫瘍疾患)|Von Hippel-Lindau病(フォン・ヒッペルリンドウ病)(平成23年度)

ふぉん・ひっぺるりんどうびょう
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1. 概要

常染色体優性遺伝性疾患で、国内に200-300家系程度で存在すると推定される。発症する主な腫瘍として脳や脊髄の血管腫、網膜の血管腫、腎細胞癌、副腎褐色細胞腫、膵臓腫瘍がある。どの腫瘍も多発し再発してほぼ一生の間発症する。脳脊髄の血管腫、網膜の血管腫、副腎褐色細胞腫は良性とされ中枢神経腫瘍は四肢の麻痺でQOLを低下させ、褐色細胞腫は高血圧発作などの症状を示し、腎細胞癌と膵腫瘍は悪性で他臓器に転移し死亡の原因となる。若年発症の難治性の疾患である。

2. 疫学

常染色体優性遺伝性疾患であり、欧米では人口100万人に対して1家系程度の発症とされる。国内では不明である。発症する主な腫瘍として脳や脊髄の血管芽腫(発症頻度70%)、網膜血管腫(発症頻度70%)、腎細胞癌(発症頻度40%)、副腎褐色細胞腫(発症頻度10-20%)、膵臓腫瘍(発症頻度10%)である。上記のように、欧米での発症頻度は明らかにされているが、日本国内の発症頻度は調査されておらず現在、詳細に調査中である。発症年齢も各腫瘍で多岐に渡っており、脳脊髄の血管腫、網膜血管腫は10歳代以下より60歳以上、腎細胞癌はやや高年齢で発症するとされる。各腫瘍の発症頻度と発症年齢、治療方法とその結果は調査中である。

3. 原因

常染色体優性遺伝性疾患で原因遺伝子は染色体3番単腕25-26領域にあるVon Hippel-Lindau病癌抑制遺伝子である。多彩な遺伝子異常があり、遺伝子異常と発症する病態の相関関係ははっきり解明されていない。一部の発症原因として遺伝子異常により遺伝子機能がなくなり血管新生因子を誘導する蛋白(Hypoxia Inducible Factor)の過剰蓄積がおこることが腫瘍形成の原因とされる。それ以外の発症原因や発症過程には未だ確定的なものはない。

4. 症状

血管の豊富な腫瘍を発症し脳脊髄の血管芽腫は主に神経症状(めまい、麻痺など)網膜血管腫は視野低下、眼球出血、腎細胞癌は血尿と肺転移、骨転移による症状、副腎褐色細胞腫はカテコールアミン産生特有の高血圧、膵臓腫瘍は膵機能低下や転移による症状、精巣上体腫瘍は不妊などの症状を起こす。どの腫瘍も多発し頻回に発生する。発症年齢は3-4歳~70歳と広範囲である。

5. 合併症

患者さんの多くは頻回に腫瘍摘出手術をうけており、その結果多くの身体障害を起こしている。例えば、網膜の腫瘍手術による失明、脳脊髄手術による四肢麻痺、下肢麻痺、腎細胞癌の手術後の腎機能不全、膵臓機能不全による糖尿病、精巣上体腫瘍摘出後の不妊症などが挙げられる。

6. 治療法

現在はすべての腫瘍で摘出以外には適切な治療法はない。一部で放射線治療が進行を遅らせる。進行した腫瘍、頻回に発生する腫瘍では手術不能の場合もあり、難治性の疾患といえる。部位により治療困難例や治療不能の例もある。具体的に脳脊髄の血管腫では摘出または放射線治療となる。脳幹部腫瘍は治療不能である。副腎褐色細胞腫は摘出か部分切除となる。腎細胞癌では摘出術、部分切除術、ラジオ波焼灼であるが、どれも発生部位により非常に困難例が存在する。網膜血管腫では主にレーザー凝固を行うが、黄斑部や視神経乳頭部腫瘍は行えない。このように手術以外の新規治療法が望まれる。

7. 研究班

フォン・ヒッペルリンドウ病の病態調査と診断治療系確立の研究班