奇形症候群分野|プラダーウイリ症候群(平成23年度)
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1. 概要 | |
プラダーウイリ症候群は、1956年内分泌科医のプラダーと神経科医のウイリーが報告した奇形症候群で、内分泌学的異常としては肥満、糖尿病、低身長、性腺機能不全など、神経学的異常としては発達遅滞、筋緊張低下、特異な性格障害・行動異常などを特徴とし、生涯にわたりQOLの低下を招く難病である。 | |
2. 疫学 | |
約4,000人(実体調査結果、 発症率、人口、寿命から推定) | |
3. 原因 | |
本症候群は、ゲノムインプリンティングの関与が初めて見出された疾患である。染色体15q11-13領域に存在する遺伝子群は、その由来が父親か母親かにより働きがことなっているため、父親由来の遺伝子群の欠失ではPrader-Willi症候群、母親由来の欠失ではAngelman症候群という全く異なる疾患となる。この父親由来の遺伝子欠如は、欠失、片親性ダイソミー、刷り込みセンター異常に起因し、それぞれの頻度は、約70%、25%、数%といわれている。しかし、各臨床症状が出現する機序は不明であり、近年、snoRNAの関与が報告されているが、詳細は不明である。 | |
4. 症状 | |
新生児-乳児期は筋緊張低下、色素低下、外性器低形成を3大特徴とする。筋緊張低下は、哺乳障害を生じる。色素低下は、ときに著明で白皮症と誤診される場合もある。外性器低形成は、女児では目立たないが、男児では停留精巣が90%以上に認められる。3~4歳頃から過食傾向が始まり、幼児期には肥満、低身長が目立ってくる。学童期には、学業成績が低下し、性格的にはやや頑固となってくる。思春期頃には、二次性徴発来不全、肥満、低身長、頑固な性格からパニック障害を示す人がいる。思春期以降、肥満、糖尿病、性格障害・行動異常などが問題となる。 | |
5. 合併症 | |
最も問題となっている合併症は、糖尿病、呼吸障害、側弯症である。糖尿病発症頻度は10歳以上では30%におよび、その治療法もきまっていない。呼吸障害は、中枢性と閉塞性の混合性呼吸障害による。成長ホルモンは扁桃肥大を介して閉塞性呼吸障害を増悪する可能性がある。また、側彎証の頻度は、40%を上回り成長ホルモン治療との関連が危惧されているが、現在まで不明である。最近は手術適応例が増加し、手術前の内科的管理の重要性が強調されてきている。 | |
6. 治療法 | |
肥満に対する基本的な食事療法や運動療法、低身長に対する成長ホルモン投与、性腺機能不全にたいする性ホルモン治療、精神的問題に対する向精神薬投与がなされている。しかし、これらの治療法の適応や効果はきちんと評価されておらず、治療指針は定まっていない。糖尿病の治療法は、患者の発達遅滞や摂食異常などを根拠に、積極的治療が行われていない。しかし、成人患者の死亡原因が、肥満・糖尿病とその合併症によることから、積極的インスリ治療の導入が提唱されてきている。 | |
7. 研究班 | |
プラダーウイリ症候群の診断・治療指針の作成班 | |