奇形症候群分野|チャージ症候群(平成23年度)
| |
1. 概要 | |
CHD7遺伝子のヘテロ変異により発症する多発奇形症候群である。 | |
2. 疫学 | |
平成21年度の研究においては2万分の1程度。 | |
3. 原因 | |
チャージ症候群の原因遺伝子ha8番染色体8q12.1に存在するChromodomain helicase DNA binding protein-7(CHD7)であるが、多系統にわたり障害が発症する機序は不明である。 | |
4. 症状 | |
① 成長障害や精神遅滞はほぼ必発である。成長障害は出生後に顕著となる。一部の症例に成長ホルモン分泌不全を伴う。② 70%程度に先天性心疾患を認める。③ 顔面の非対称性(顔面神経麻痺症状)を認める。左右の耳介の形態も異なることが多い。眼険下垂、上額低形成、下顎低形成(PierreRobinシークエンス)、口唇口蓋裂などの合併あり。これらの奇形に加えて、咽頭・喉頭の協調運動の低下により、 哺乳障害・嚥下障害をきたす。④ 片側ないし両側性の虹彩・網膜・脈絡膜・乳頭のコロボーマ(欠損)はほぼ必発である。⑤ 耳垂の無または低形成などの耳奇形に加え、感音性・伝音性または混合性難聴を認める。⑥ 膜性・骨性の後鼻孔閉鎖(狭窄)を認める。口蓋裂の合併例も多く、その場合には後鼻孔閉鎖を認めない。⑦ 停留精巣・尿道下裂,陰唇の低形成・二次性徴の欠如など性器低形成(~70%)。 | |
5. 合併症 | |
成長障害・発達遅滞に加えて視力障害、心不全・チアノーゼ、呼吸障害、性腺機能不全、難聴などを合併する。循環器・呼吸器という生命維持に必須の臓器の障害に感覚器の二重障害(聴覚障害・視覚障害)を伴う、慢性的かつ持続的な疾患であり、生活面での長期にわたる支障を来たす。 | |
6. 治療法 | |
多臓器に合併症をきたすため、多面的な医療管理を必要とする。乳幼児期早期の生命予後を決めるのは先天性心疾患と呼吸器障害である。すみやかに気道(後鼻孔・口蓋・喉頭・気管)、心臓の評価と治療を進める。必要に応じて、後鼻孔閉鎖・狭窄に対する外科的治療をおこなう。喉頭の構造異常等により上気道閉塞を生じる場合には気管切開をおこなう場合もある。多くの患者では嚥下機能が低下しており、周術期には誤嚥に注意する。成長障害・発達遅滞を合併することから栄養・成長・療育等の問題について、早期介入・継続的なフォローを必要とする。哺乳障害・摂食障害が続く場合には経管栄養・胃瘻造設をおこなう。 | |
7. 研究班 | |
チャージ症候群の成人期の病像の解明と遺伝子診断の臨床応用・iPS細胞の確立 | |