眼科疾患|Fuchs角膜内皮変性症(平成23年度)

Fuchsかくまくないひへんせいしょう
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1. 概要

Fuchs角膜内皮変性症は原発性に角膜内皮が障害され、進行性に内皮細胞数の減少をきたす疾患である。正常人でも角膜内皮は老化とともに漸減していくが、F症では内皮細胞数の異常減少とともに細胞の形態異常も伴い、進行すると水疱性角膜症となり視力は手動弁ないし光覚弁にまで低下する。

2. 疫学

Fuchs角膜内皮変性症には民族差があり、白人に多く日本では稀とされ、また、男性より女性に多いとされている。Fuchs角膜内皮変性症の正確な有病率は不明であるが、本研究班による平成21年度の臨床調査の集計結果から、眼科外来受診者計29,186例のうち、Fuchs角膜内皮変性症は31例で、病院ベースでの有病率は0.11%であった。

3. 原因

Fuchs角膜内皮変性症の一部は優性遺伝形式をとるといわれている。ただし、女性に多いなど優性遺伝では説明のつかない遺伝形式もみられる。一部の症例はCOL8A2、SLC4A11、TCF8などの遺伝子における異常が原因と考えられているが、原因遺伝子がはっきりしていない症例も多い。老化や環境因子など、多因子疾患である可能性も考えられる。

4. 症状

両眼性に角膜浮腫による混濁が進行し、最終的には水疱性角膜症に至り、手動弁ないし光覚弁にまで視力が低下する。また、角膜浮腫に伴い角膜上皮びらんを生じやすくなり、眼痛をくりかえす。角膜内皮面の滴状角膜とよばれる所見が特徴的であるが、本研究班の調査により、滴状角膜があっても水疱性角膜症に進行しにくい疾患群:無症候性滴状角膜(Asymptomatic guttata cornea)の存在の可能性も見出された。

5. 合併症

角膜上皮びらんの遷延化により、眼痛を伴うことがある。

6. 治療法

進行した症例では、角膜移植以外に有効な治療法はない。

7. 研究班

Fuchs角膜内皮変性症および関連疾患に関する調査研究班