6)耳鼻科疾患分野|優性遺伝形式をとる遺伝性難聴(平成24年度)
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1. 概要 | |
常染色体優性遺伝形式をとる非症候群性の感音難聴。国内での罹患者数はおおよそ1万人と少なく希少である。また、家系ごとに原因遺伝子や臨床経過が異なるため、効果的な診断法および治療法は未だ確立されておらず、多くの場合発症メカニズムは不明である。臨床的には様々なタイプの難聴が含まれており、聴力像・難聴の程度・めまいなどの随伴症状の有無も多様である。進行性の難聴が多いため、長期に渡って生活面で支障を来たす場合が多い。さらにまた、優性遺伝形式で遺伝するため、再発率(次の世代に難聴が遺伝する確率)が50%であることより、患者の心理的負担が大きい。 | |
2. 疫学 | |
「優性遺伝形式をとる遺伝性難聴」の罹患頻度は、非症候群性難聴患者(出生児1000人に1人)の約10%程度と推定されている(Kimberling et al., 1999)。この推定に基づくと、日本人における患者数はおおよそ13,000人であると考えられる。 | |
3. 原因 | |
現在までにいくつかの原因遺伝子が同定されているが、家系ごとに原因遺伝子および遺伝子変異部位が異なるため、効果的な診断方法は確立していない。現在までに優性遺伝形式をとる難聴の原因遺伝子としてはKCNQ4、COCH、EYA1、TECTA、WFS1、CRYM、MYO7Aなどが知られているが、難聴の程度、難聴の型なども様々である。 | |
4. 症状 | |
(1)両側感音難聴
富んでいる。また、聴力像も水平型、低音障害型、中音域障害型、高音障害型など多様である。 | |
5. 合併症 | |
めまいや耳鳴りなどの蝸牛・前庭症状を伴う場合がある。 | |
6. 治療法 | |
・現時点では疾患そのものを治療する有効な治療法は無く、補聴器あるいは人工内耳による補聴が有用である。 | |
7. 研究班 | |
遺伝性難聴および外耳、中耳、内耳奇形に関する調査研究 | |