(11)整形外科疾患分野|大理石骨病(平成24年度)

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1. 概要

大理石骨病は、骨吸収障害に基づくびまん性骨硬化性病変の総称である。異質性の高い疾患であり、予後不良な常染色体劣性乳児型(乳児悪性型)と軽症の常染色体優性成人型(遅発型)が主要な病型であるが、中間型や、尿細管性アシドーシスを伴うCarbonic anhydrase II 欠損症、免疫異常を伴うOL-EDA-IDと呼ばれる病型も存在する。乳児悪性型は骨髄機能不全、肝脾腫、進行性難聴や視力障害等の症状を呈し、治療が行われなければ致死的である。成人型(遅発型)では骨折や骨髄炎などを起こす。近年、複数の責任遺伝子があいついで同定されたが、これらの遺伝子は破骨細胞の形成や機能に関与する。病型により、病態や臨床症状、予後、治療が異なるため、遺伝子診断を含めた病型診断が重要である。

2. 疫学

常染色体優性成人型が10万人に1人(ブラジルでの調査)、乳児型はより少ない。

3. 原因

骨吸収を担当する破骨細胞の形成や機能の障害にもとづく。乳児型大理石骨病を引き起こす責任遺伝子として、これまでに5遺伝子が同定されている。空胞型プロトンポンプa3サブユニットをコードするTCIRG1、クロライドチャネルをコードするCLCN7、マウスのgrey-lethalのヒトオルソログであるOSTM1、破骨細胞の分化や活性化、生存に関わるRANKLをコードするTNFSF11、RANKLに対する受容体であるRANKをコードするTNFRSF11Aである。成人型(遅発型)大理石骨病はCLCN7やLRP5のヘテロ変異で引き起こされる。中間型大理石骨病は、CLCN7変異の他、PLEKHM1遺伝子の変異に基づく症例の報告がある。これらの遺伝子に変異の見つからない症例も認められ、未同定の責任遺伝子の存在が推察される。

4. 症状

乳児悪性型大理石骨病は通常、乳児期早期に大頭症、進行性難聴および視力障害、肝脾腫、重度の貧血で発症する。これらの症状は未熟骨の吸収障害に基づく。すなわち、難聴、視力障害は神経管狭小化による神経圧迫症状として出現し、貧血は骨髄腔の狭小化による。代償的髄外造血により肝脾腫がひき起こされる。汎血球減少となるため感染や出血を起こしやすく、治療が行われなければ幼児期までに死亡することが多い。中間型は小児期に発症し、骨折や骨髄炎、低身長、軽度〜中等度の貧血、髄外造血、歯牙の異常、顔面神経麻痺、難聴等を種々の程度に呈する。成人型は通常、小児期に骨折や下顎の骨髄炎、顔面神経麻痺などで気づかれる。未熟骨が成熟した緻密骨に置き換えられず、易骨折性を来す。

5. 合併症

乳児悪性型大理石骨病においては、骨髄狭小化に伴う骨髄機能不全により、貧血、易感染性、出血傾向を来す他、神経管狭小化による神経圧迫症状として進行性難聴や視力障害を来す。中間型や成人型においても、同様の神経圧迫症状を種々の程度に呈するほか、しばしば骨折や骨髄炎を合併する。

6. 治療法

TCIRG1やCLCN7、TNFRSF11Aなど破骨細胞系列の細胞に発現する遺伝子の変異による大理石骨病については、治療として造血幹細胞移植が行われる。一方、TNFSF11の変異に基づく大理石骨病においては造血幹細胞移植は無効であり、RANKLのリコンビナント蛋白質の投与が有効である。造血幹細胞移植を受けた症例の追跡研究から、移植時年齢の重要性が示唆されている。また、神経管狭小化にともなう神経症状の進行を抑制する意味でも早期の移植が必要である。

7. 研究班

重症骨系統疾患の予後改善に向けての集学的研究