免疫系疾患 分野|全身性炎症性肉芽種性疾患(ブラウ症候群/若年発症サルコイドーシス)(平成24年度)

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1. 概要

優性遺伝形式を示すブラウ症候群と、弧発例である若年発症サルコイドーシスは、ともにNOD2遺伝子の恒常活性変異体によって、皮膚、関節、眼に肉芽腫を来たす疾患であり、今日では自然免疫に関わる分子の遺伝子異常を背景とする「自己炎症性疾患」に分類される。疾患概念が充分に浸透しているとは言えず、適切な診断を受ける機会がなく治療介入が後れ、病勢を進行させている症例が多い。

2. 疫学

昨年度の本事業により全国の500床以上の内科、小児科、整形外科(リウマチ科)、皮膚科を対象として行った全国調査によって、診断確定例28例、疑い症例12例という結果が得られており、国内の患者数は50例程度と推定される。

3. 原因

ブラウ症候群では、2001年に細胞内で微生物特異的な配列を認識するNOD2に、この分子を恒常的に活性化させる変異が入っていることが明らかにされた。その後、我々によってブラウ症候群とほぼ同様の臨床症状を呈する弧発例の若年発症サルコイドーシスにおいても、NOD2の恒常活性型変異が確認された。しかし、NOD2の遺伝子異常によってNF-κBの転写亢進が誘導されるものの、なぜ肉芽腫に結びつくのかは依然として不明である。

4. 症状

4歳以前に発症し、皮疹(紅潮を伴った充実性丘疹)、関節症状(腱鞘炎)、眼症状(病変は全眼球性におよぶ)を3主徴として、組織学的にはいずれも非乾酪性巨細胞性肉芽腫を特徴とする。成人のサルコイドーシスに特徴的とされる肺門リンパ節腫脹は認めない。

5. 合併症

関節症状は、進行に伴い脱臼や関節拘縮をきたす。眼症状の進行に伴い、失明をきたす。これらの結果、患者のQOLは著しく障害される。

6. 治療法

進行例にはステロイド内服が主に行われれている。対症療法にとどまるものの、ステロイドの内服は眼症状の進行抑制にはある程度奏功する。NF-κB阻害作用を期待したサリドマイドの使用や、TNF-α阻害剤の使用が症例報告レベルでは施行されている。RIP2阻害剤の開発も進められているが、本症に対する効果は試されていない。

7. 研究班

NOD2変異に関連した全身性炎症性肉芽種性疾患(ブラウ症候群/若年発症サルコイドーシス)の診療基盤促進