(7)循環器系疾患|QT延長症候群(平成24年度)
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1. 概要 | |
QT延長症候群は心筋再分極異常による心電図QT間隔の延長とそれに伴う致死性不整脈が問題となる遺伝性不整脈疾患である。2500人に1人の頻度で発見され、50-70%に心筋再分極に関与する蛋白の遺伝子変異が同定される。遺伝子変異のサブタイプによって有効な治療方法が異なり、テーラーメイド医療が実施されている疾患である。 | |
2. 疫学 | |
昔から家族内に突然死や失神が集積する家系があることがわかっていたが、1950年代以降、心電計が普及した結果、心電図上、著しいQT時間の延長と特異な多形性心室頻拍をきたす疾患群があることが判明し、QT延長症候群と命名された。遺伝形式は常染色体優性遺伝で感音性難聴を伴わないロマノワード症候群と劣性遺伝で難聴を伴うジャーベル・ランゲ・ニールセン症候群がある。最近の研究で、その発症頻度は約2500人に1人とされる。 | |
3. 原因 | |
心筋イオンチャネルや心筋膜裏打ち蛋白の遺伝子の異常によってQT間隔の延長を引き起こす。現在までに明らかになっている責任遺伝子は13あるが、90%以上はタイプ1から3である。培養細胞を用いた機能解析では、遺伝子変異が原因で起こる蛋白の膜発現の異常や機能異常による心筋再分極異常が原因であることが報告されている。サブタイプで不整脈誘発に関する因子が異なることも特徴で、異常なイオンチャネルを修飾する2次的要因が異なることが考えられる。近年はiPS細胞を用いた探索も行われている。 | |
4. 症状 | |
主な症状は致死性心室性不整脈による意識消失発作と突然死である。 | |
5. 合併症 | |
致死性心室性不整脈が持続すれば、低酸素脳症などの合併症をきたす場合がある。 | |
6. 治療法 | |
β遮断薬や第一選択薬である。遺伝子型が明らかになった場合は、テーラーメイド医療が実施可能である。90%以上をしめるのはタイプ1から3であるが、タイプ1はβ遮断薬が有効であり、タイプ2はβ遮断薬とペースメーカー植え込み、タイプ3はI群抗不整脈薬が有効である。β遮断薬が無効で、心室細動からの蘇生症例などには植え込み型除細動器が推奨される。 | |
7. 研究班 | |
先天性QT延長症候群の家族内調査による遺伝的多様性の検討と治療指針の決定班 | |