代謝疾患分野|シトリン欠損症(平成24年度)

しとりんけっそんしょう
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1. 概要

シトリンは、ミトコンドリア内膜に存在する、肝型アスパラギン酸・グルタミン酸膜輸送体蛋白で、この蛋白の欠損により、細胞質へのアスパラギン酸供給障害やミトコンドリアへのNADHの供給障害、糖新生障害を引き起こす。シトリン欠損症は、新生児・乳児期では肝内胆汁うつ滞症(NICCD)、高シトルリン血症、幼児・青年期では無症状ながら食癖異常など、成人期では高アンモニア・高シトルリン血症、精神症状、肝不全などの成人型シトルリン血症(CTLN2)を発症する。治療は確定したものはないが、各症状に対して対症療法を行い、最終的には肝移植を必要とする場合もある。最近、CTLN2発症予防、治療としてピルビン酸ナトリウム投与、中鎖脂肪酸、炭水化物制限食などの食事療法が考えられている。

2. 疫学

シトリン欠損症は日本で1/17,000、中国南部で1/6,400と東アジアを中心に高い頻度を示す。
最近では、東南アジア諸国での患者の報告が相次ぎ、また欧米人でも患者が報告されている。
日本では6,000人前後の患者数が推定されているが、シトリン欠損症があっても、必ずしも成人型シトルリン血症を発症するわけではなく、その発症率は約10-20%と推察されているが、正確な発症率は未だ不明である。

3. 原因

SLC25A13遺伝子の異常で、シトリンというミトコンドリア蛋白の欠損(あるいは機能異常)が生じることで、シトリン欠損症となる。

4. 症状

シトリンは、糖分からのエネルギー産生、尿素回路でのアンモニア代謝などに関わっており、シトリン欠損症患者では、糖質や飲酒を嫌い、乳製品や肉類、大豆食品などの高蛋白食・高脂質食を好む食嗜好がみられる。
シトリン欠損症は新生児から老年までの幅広い年齢にわたり、また、それぞれの患者で異なる症状を呈する。
1)新生児・乳児期:子宮内発育不全、高シトルリン血症、ガラクトース血症、肝内胆汁うつ滞症、黄疸、発育不全、低血糖症、ビタミンK欠乏性凝固異常を呈するが生後6~12ヶ月で自然軽快する。2)幼児から青年期:食癖異常(高脂肪高蛋白低糖質、頻回摂取)、成長障害(体重増加不良)、易疲労感、低血糖症、肝機能異常。
3)成人期:成人発症II型シトルリン血症ー高アンモニア血症。意識障害。けいれん。精神症状(見当識障害、異常行動など)。

5. 合併症

1)新生児・乳児期:凝固障害による脳内出血、ガラクトース血症による白内障。
2)学童から成人期:高脂血症、脂肪肝、肝癌、膵炎、成長障害、神経性食思不振症

6. 治療法

1)新生児・乳児期:胆汁うつ滞に対する治療(利胆剤、脂溶性ビタミン剤、MCTミルク)、
ガラクトース除去ミルク。肝不全をきたし、肝移植を必要とする症例もある。
2)食事療法(高脂肪・高蛋白・低炭水化物食)。
3)成人期(成人発症II型シトルリン血症):
高アンモニア血症に対する対症療法(アミノレバン点滴、カナマイシン内服、ラクツロース内服、アルギニン製剤内服)、食事療法(炭水化物制限食)、MCT(中鎖脂肪酸)、
ピルビン酸ナトリウムの投与、肝移植。

7. 研究班

シトリン欠損症患者における臨床像の多様性の解明と致死的脳症の発症予防法の開発研究班