(17)奇形症候群分野|ヤング・シンプソン症候群(平成24年度)
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1. 概要 | |
ヤング・シンプソン(Young-Simpson)症候群は、1987年にYoungとSimpsonが先天性心疾患、甲状腺機能低下症、精神遅滞、眼瞼裂狭小を含んだ顔貌異常を特徴とする1症例として報告したのが第1例で、その後、我が国からの追加報告により疾患概念が確立した(Masuno 1999; Kondoh 2000)。多臓器にわたる合併症の医療管理が重要。当研究班によるエクソーム解析により、責任遺伝子がMyst4/KAT6Bと同定された。これにより遺伝子診断による確定が可能となり、国内で6例の患者の確定診断がなされている。今後、正確な遺伝子診断に基づく病態の解析が課題となる。 | |
2. 疫学 | |
約10万出生に1例と推定されている。したがって少なくとも国内に100例の患者が予想される。平成23年度研究により責任遺伝子が同定され、遺伝子診断により6例が診断確定した。 | |
3. 原因 | |
10番染色体q22.2にマップされるLysine acetyltransferase KAT6Bが原因遺伝子で、変異はエクソン18に集中する。臨床病名として、Say-Barber-Biesecker-Young-Simpson症候群とも呼ばれる。その後、臨床症状がヤング・シンプソン症候群と共通するGenitopatellar症候群も同様にKAT6Bが責任遺伝子であることが判明した。原因遺伝子が同定されたものの、その病態や発症機序は不明な点が多く、今後の課題である。 | |
4. 症状 | |
精神遅滞、先天性心疾患、甲状腺機能低下症、眼瞼裂狭小、特異顔貌、骨格異常、泌尿・生殖器異常 | |
5. 合併症 | |
関節拘縮、側彎、内反足などの骨格異常、耳介前部のろう孔。内反足は手術を要する。眼瞼裂狭小では、ときに斜視や屈折異常も伴い、眼科的評価は不可欠。強度の弱視など。難聴も認める。停留精巣、矮小陰茎、膀胱尿管逆流、後部尿道弁狭窄など泌尿器・生殖器系合併症もある。ほかに小頭症、口蓋裂、新生児期哺乳不良、筋緊張低下、脳奇形などを合併することもある。 | |
6. 治療法 | |
対症療法が中心。内反足では固定の他に手術治療を選択することも少なくない。心奇形についても同様である。眼科的評価は不可欠で、鼻涙管閉塞に対した処置や屈折異常に対しての眼鏡処方なども必要。早期の療育参加やリハビリテーションは重要である。甲状腺機能低下症に対しては甲状腺ホルモン投与などが必要。聴覚評価に基づき、補聴器も検討する。生涯にわたる医療管理はよりよい生活のために必要。 | |
7. 研究班 | |
ヤング・シンプソン症候群の病態解明と医療管理指針作成に関する研究班 | |