免疫系疾患分野|高IgD症候群熱(平成24年度)
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1. 概要 | |
コレステロール生合成経路に関わるメバロン酸キナーゼ(MK)の活性低下により発症する周期性発熱症候群です。残存MK活性により、先天奇形や精神発達遅滞などの神経学的症状を伴う重症型のメバロン酸尿症(酵素活性1%未満)と、軽症型である高IgD症候群(同1-10%)とに分類されますが、両疾患を連続性のあるメバロン酸キナーゼ欠損症(MKD)として捉えるのが現在の主流です。欧州からの報告が多く、血清IgD値が高値である例が多い事が疾患名の由来ですが、本邦の症例ではIgDの上昇を認めない事が多く、診断には注意を要します。 | |
2. 疫学 | |
本邦では6症例で診断が確定しており、10名程度の潜在患者が予想される。 | |
3. 原因 | |
コレステロール生合成に関わるメバロン酸キナーゼ(MK)の機能低下が原因であり、遺伝子MVKの異常による常染色体劣性遺伝形式をとります。残存MK活性により、先天奇形や精神発達遅滞などの神経学的症状を伴う重症型のメバロン酸尿症(酵素活性1%未満)と、軽症型である高IgD症候群(同1-10%)とに分類されます。然しながら、メバロン酸キナーゼ(MK)の機能低下が周期性発熱を引き起こす分子機構に関しては、未だに解明されていません。 | |
4. 症状 | |
乳児期より始まる周期性発熱発作が大きな特徴であり、発作の持続期間は4~6日が多く、頭痛、嘔吐、下痢、腹痛、リンパ節腫脹等を伴います。その他、肝脾腫、発疹、関節痛、アフタ性口内炎を伴う事もあります。海外からの報告では、80%以上の症例で血清IgD値の上昇を認めるとされていますが、本邦での診断例の殆どでは血清IgD値は正常です。 | |
5. 合併症 | |
腹膜炎に続発する腹腔内癒着、間接拘縮、アミロイドーシスなどが認められ、重症例では精神発達遅滞や痙攣を合併する症例も存在します。又、乳児期からの発熱発作による学習の遅れも半数の症例で認められ、社会的機能への影響もあります。 | |
6. 治療法 | |
本疾患の具体的治療指針は未だ定まっていませんが、発作時の副腎皮質ホルモンの短期的全身投与が多くの症例で有効とされており、メバロン酸の合成に関わるHMG-CoA還元酵素を阻害するスタチンも一定の患者に対して有効です。近年、抗IL-1b製剤であるアナキンラや抗TNF製剤であるエタネルセプトの有効例が報告されています。コルヒチンが使用される事もあり、根治療法としての造血幹細胞移植も海外では報告されています。 | |
7. 研究班 | |
「自己炎症疾患とその類縁疾患に対する新規診療基盤の確立」研究班 | |