消化器系疾患分野|慢性特発性偽性腸閉塞症(成人例)(平成24年度)

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1. 概要

慢性偽性腸閉塞症は全消化管運動機能障害で、物理的な腸管の閉塞を認めないにも関わらず、腸閉塞様症状をきたす原因不明の難治性疾患である。疾患名の如く罹病期間は慢性的、長期にわたり、患者の生活の質を著しく低下させている。我が国での報告例は少数であり詳細は未だ不明である。現時点では治療法は確立されておらず、薬物療法や栄養療法などの対症療法が行われている他、腸閉塞に対しての手術療法が行われた後に再燃をきたし、より難治化した報告もある。海外では小腸移植が行われている。

2. 疫学

過去の研究班の調査で推定全国で2000名程度(成人例のみ)

3. 原因

原因不明の特発性と、神経疾患や膠原病に併発する続発性があることが知られている。病理学的には腸神経障害型と腸筋障害型、カハール細胞の異常による型などがあると考えられているが、それ以上の病態は現時点では不明であり、解明が急務と考えられる。

4. 症状

消化管機能低下に伴う下痢、便秘、腹痛、悪心、嘔吐などを日常的に繰り返している症例が多い。そのため食欲不振、栄養吸収障害もあり、体重減少をきたすこともある。また腸閉塞が悪化した場合に入院加療が必要になり、さらに腸管壊死等に伴う重篤な症状をきたすことがある。

5. 合併症

腸閉塞の悪化に伴う腸管壊死、腸管穿孔等、外科的治療を要する病態が発生することがある。また腸内容物停滞による細菌異常繁殖による腸炎、下痢も出現することがある。低栄養のため経管栄養や中心静脈栄養が必要となる症例もある。最も問題となる合併症は慢性的な症状の繰り返しによる生活の質の低下である。

6. 治療法

確立された治療法はない。症状が軽度の場合は食事コントロールのみで経過をみることもある。薬物療法としてはクエン酸モサプリドなどの消化管運動賦活薬や、緩下剤、胃酸分泌抑制薬、漢方薬、抗生物質、整腸剤などが用いられていた。低栄養症例に対しては経管栄養や中心静脈栄養などが行われる。腸閉塞の手術が行われたとの回答もあった。海外では手術療法として腸管移植が行われている報告もあるが、確立された治療法ではない。

7. 研究班

小児期からの消化器系希少難治性疾患の包括的調査研究とシームレスなガイドライン作成