消化器系疾患分野|腹部リンパ管腫及び関連疾患(平成24年度)

研究班名簿 一覧へ戻る

1. 概要

リンパ管腫は主に小児(多くは先天性)に発生する大小のリンパ嚢胞を主体とした腫瘤性病変であり、生物学的には良性とされる。全身どこにでも発生しうるが、特に頭頚部や縦隔、腋窩、腹腔・後腹膜内に好発する。腹部リンパ管腫の多くの症例では硬化療法や外科的切除等による治療が可能であるが、重症例はしばしば治療困難であり、腸閉塞等の機能的な問題や血尿、慢性的な腹痛、腫瘤による圧迫感などの問題を抱えている。血管病変を同時に有することもあり、診断をより困難にしている。リンパ管腫を病態の一つに含む、より複雑な症候性疾患が知られており、診断・定義についてはまだ不確かなところがある。鑑別を要する疾患として、リンパ管拡張症、Klippel-Weber- Trenauney症候群、Blue-Rubber-Bleb Nevus症候群、Gorham-Stout症候群などがあり、診断までに非常に長い時間を要する症例もある。

2. 疫学

推定1,000人未満
平成21-23年度厚生労働省難治性疾患克服研究事業「日本におけるリンパ管腫患者(特に重症患者の長期経過)の実態調査及び治療指針の作成」 による「リンパ管腫患者の全国実態調査のための予備調査」結果より推定

3. 原因

多くは先天性であり、胎生期のリンパ管の発生異常により生じた病変と考えられており、脈管奇形の一つとして理解することが試みられているが、現時点では証明されていない。

4. 症状

リンパ管腫の多くは頭頚部、体幹、四肢の体表から認められる腫瘤を形成するが、胸腔・腹腔内にあって外観上分かりにくい場合もある。内部に感染や出血を起こし、急性の腫脹・炎症により、特に腹部病変では消化管通過障害や膵炎・胆管炎、水腎症、血尿等の症状を呈することがある。腹腔内から体表までを広範に占拠する病変や実質臓器に浸潤するものもあり、重症度は様々である。

5. 合併症

局所の急性感染、出血、リンパ漏、乳糜腹水、リンパ管腫内出血、腹痛、嘔吐、下痢、血尿等

6. 治療法

外科的切除、硬化療法(ピシバニール、ブレオマイシン、高濃度アルコール、高濃度糖水、フィブリン糊等)、抗癌剤(ブレオマイシン、ビンクリスチン等)、インターフェロン療法、ステロイド療法など。

7. 研究班

小児期からの消化器系希少難治性疾患の包括的調査研究とシームレスなガイドライン作成