内分泌疾患分野|性分化疾患(平成24年度)
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1. 概要 | |
性分化疾患は、出生時の外性器異常(性別判定困難)や思春期発来異常を招く極めて多様な病気の総称であり、付随症状・合併症状を伴うタイプと伴わないタイプに大別される。多くは適切な社会的性の決定を必要とする新生児期救急疾患であり、かつ、思春期発来障害、性腺腫瘍易発症性、性同一性障害、不妊症などを伴う難病である。 | |
2. 疫学 | |
本邦における患者数は、平成21年度実施の全国実態調査における回答率と患者数から約6,500人と推定される。なお、国際的には、出生時の社会的性の決定に難渋するような症例は、出生児の4,500人に1人程度と推定されている。 | |
3. 原因 | |
出生時・乳児期の外性器異常と思春期発来異常に大別して記載する。個々のグループが高度の遺伝的異質性を有するため、原因は極めて多岐にわたる。(1)出生時・乳児期の外性器異常:遺伝的男児では、精巣形成障害、性ホルモン産生障害、性ホルモン効果障害に大別される。精巣形成障害では、染色体異常症(特に性染色体異常症)がしばしば認められる以外に、SF-1遺伝子などの変異が報告されているが、何らかの遺伝子変異が同定されるのは全体の20%以下の症例にとどまる。性ホルモン産生障害は、多くの症例において内分泌的に診断可能である。性ホルモン効果障害では、アンドロゲン受容体異常症と臨床診断される症例が最多を占めるが遺伝子変異が同定されるのは50%以下に過ぎない。遺伝的女児では、性腺、副腎、胎盤由来の男性ホルモン過剰が主因である。(2)思春期発来異常:男女共に、ゴナドトロピン分泌低下と性ホルモン産生低下に大別される。その他、先天奇形症候群に伴う性分化疾患では、当該遺伝子の変異が同定されることがある。なお、これらの原因は、大部分の症例において性同一性障害や不妊症を招く。 | |
4. 症状 | |
外性器異常、思春期発来異常、性同一性障害、不妊症を中核症状とする。特に出生時の外性器異常は、社会的性(養育上の性)の決定を困難とするため、最大の問題である。 | |
5. 合併症 | |
(1)Y染色体を有する性腺形成異常患者における性腺腫瘍発症、(2)性染色体異常症患者における成長障害、(3)副腎疾患を伴う患者におけるショック症状や突然死のリスク、(4)先天奇形症候群を伴う患者における当該症状、(5)多くの患者における性同一性障害、(6)社会心理的問題、(7)成人年齢における不妊症などが挙げられる。 | |
6. 治療法 | |
(1)外性器形態異常を有する患者における外性器形成術、(2)ホルモン補充療法(男児のミクロペニスに対するテストステロン投与、男女両性における思春期からの性ホルモン補充)、(3)Y染色体を有する性腺形成異常患者における性腺摘出術、(4)社会・心理的なサポートなどが挙げられる。 | |
7. 研究班 | |
性分化疾患の実態把握と病態解明ならびに標準的診断・治療指針の作成研究班(H24-難治等(難)-一般-048) | |