循環器系分野|家族性大動脈瘤・解離(平成24年度)

かぞくせいだいどうみゃくりゅう・かいり
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1. 概要

胸部大動脈瘤及び解離の原因としてマルファン症候群に代表される結合組織異常や特発性が知られているがマルファン症候群に見られる身体的特徴を有さない家族性集積例があり家族性胸部大動脈瘤・解離(familial thoracic aortic aneurysms and dissections)として注目されている。大動脈瘤径の拡大がマルファン症候群の0.1cm/年、特発性の0.03cm/年に比して0.22cm/年と有意に速い事が特徴の一つであるとされている。発症部位・年齢は同一家族内でも必ずしも一定でない。

2. 疫学

頻度としてはマルファン症候群以外の19-21%と報告されている。

3. 原因

家族性大動脈瘤には様々な遺伝子異常が関与し、遺伝形式も常染色体優性のみならず浸透率程度にも差が大きい。現在までに原因遺伝子としてはTAAD1、FAA(familial aortic aneurysm)1,TAAD2,TGFBR1,2(transforming growth factor-beta type I,II)遺伝子が挙げられておりまた染色体5q13-15, 11q23.2-24, 3p24-25に存在する事が知られている。また血管平滑筋特異的ミオシン(MYH11)やアクチン(ACTA2)の変異も報告されているがマルファン症候群やLoeys-Dietz症候群等近縁疾患との遺伝子異常重複についての解明等今後の解析が更に必要。

4. 症状

解離や瘤に伴う合併症、偶然画像的に発見される年齢はマルファン症候群に比して遅いものの有意に特発性に比して若年となっている(Marfan症候群27.4歳、家族性55.4歳、特発性65.7歳)。家族性大動脈瘤・解離では79.7%に上行大動脈瘤を認め20.3%に同部位の解離を、50%に下行大動脈の瘤・解離を認めている。遺伝形態としては79.5%に常染色体もしくは伴性優性遺伝形式を認めている。また家族内での動脈瘤の発生部位としては66.5%が胸部大動脈、24.9%が腹部大動脈、8.6%に脳動脈やその他の動脈瘤の併発を認めている。

5. 合併症

殆どの胸部瘤患者は診断時に無症状である。大動脈根部の拡張からは大動脈弁不全を生じ鬱血性心不全を呈し得る。また瘤径の拡大に比例し気管や食道を圧迫し咳嗽・息切れ、反復性の肺炎、嚥下困難を来たし得る。また反回神経の圧迫から嗄声を来たす事もある。最終的には瘤破裂・解離を来たし典型的な急性大動脈症候群の症状を呈し得る。また置換術での合併症として脳梗塞・心筋梗塞・腎不全・出血や胸腹瘤術後に起こりえる対麻痺が挙げられる。

6. 治療法

外科的治療法は人工血管置換術が基本であり上行瘤は径5.5c以上、下行瘤では6cm以上の場合適応とされるがMarfan・家族性等の場合はより早期に大動脈弁置換を含めた適応とする施設が多い。逆に高齢や脳梗塞既往、再手術例では手術危険度を勘案した術時期決定がなされる。内科的には降圧薬治療となるが下行瘤ではβブロッカーの有用性が示されておりまたMarfan症候群の大動脈根部の拡張に関してはACE阻害薬やARBの有用性が昨今示され始めている。

7. 研究班

大動脈疾患症例の実態解明・効果的な進行予防・治療を目的とした全国的統一基盤システムの構築と研究