MODY(家族性若年糖尿病)
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1. 概要 | |
メンデル遺伝の若年糖尿病や多彩な臨床像を呈する稀少疾患であり、現在までに6 種類の原因遺伝子が同定されています(MODY1-6)。MODY の耐糖能異常はインスリン分泌不全を特徴とし、一般の2 型糖尿病でみられる肥満インスリン抵抗性は認めません。重症度は病型によって多様であり、原因遺伝子を発現する臓器(肝臓、腎臓、小腸、子宮、肺など)に応じた多様な臨床像を合併します。 | |
2. 疫学 | |
MODY の頻度は、糖尿病全体の1-3%程度と推定されていますが、本邦では確かな調査はありません。 | |
3. 原因 | |
インスリン合成・分泌に関する遺伝子やその発現を制御する転写因子の異常によって発症します。 | |
4. 症状 | |
耐糖能異常は、若年発症を除くと、非肥満とインスリン分泌不全を特徴とし、日本人2 型糖尿病に類似した臨床像を呈します。型によっては、境界型や腎症糖尿のみを示す軽症例がある一方で、重症のために1 型と鑑別不能な場合もあります。糖尿病以外では、腎嚢胞、高尿酸血症、生殖器形成異常、精神異常、骨格形成不全、脂質異常、癌など多様な臨床像を認めることが特徴的です。 | |
5. 合併症 | |
慢性高血糖に基づく合併症は一般の2 型糖尿病と共通です。MODY3 では、肝の脂質代謝異常により動脈硬化が促進されて心血管イベントリスクが増大します。MODY5 では、ネフロン形成不全により腎機能低下をきたし、腎不全や血液透析に至る場合が少なくないです。肝臓や腎臓などでの発癌も高率に見られます。女性例で生殖器の形成不全があれば不妊となります。 | |
6. 治療法 | |
遺伝子異常が原因であるために根治的な治療法はありません。糖尿病と血管合併症については一般の糖尿病や動脈硬化と同様の治療が行われます。MODY2 では治療を必要としない場合が多く、MODY3では重症例が多くてインスリン治療が必須となる場合が少なくないですが、一方で、2型と異なりインスリン依存であってもスルホニル尿素薬の作用経路が保持されるので同薬が著効する場合があります。また、MODY5 に特徴的な末期腎不全については、正常DNA を有する腎移植が根治的に有効なので、鑑別や治療法の選択において遺伝子検査が重要となります。 | |
7. 研究班 | |
MODY1-6 の病態調査と識別的診断基準の策定研究班(岐阜大学、大阪大学、熊本大学) | |