血管奇形分野|リンパ管腫症
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1. 概要 | |
中枢神経系を除く軟部組織や骨、肝臓、脾臓、肺、縦隔などにびまん性にリンパ管組織が増殖する非常に稀な先天性疾患である。骨に血管やリンパ管が浸潤し骨溶解を起こすゴーハム病も類似した疾患と考えられている。本邦において症例報告はなされているが、正確な患者数は把握されていない。また発症要因などに関してもわかっていない。小児、若年者に多く発症し、症状や予後は浸潤臓器により様々だが、特に縦隔、肺に浸潤し、乳び胸による呼吸困難や窒息を起こし、多くは致命的である。また骨に浸潤し、疼痛や骨折も起こす。これらは外科療法や内科療法(インターフェロン、化学療法など)を行うが、多くは治療抵抗性である。 | |
2. 疫学 | |
現時点では、国内での症例数の詳細は不明であるが、過去の文献からは数十例と推定される。海外の報告では世界で200 例ほどとされている。小児、若年者に多く、ほとんどが20 歳までに発症すると言われている。 | |
3. 原因 | |
リンパ管系の異常発生による稀な新生物であると考えられているが、原因はほとんど明らかになっていない。 | |
4. 症状 | |
症状は腫瘍の浸潤部位による。多いのは胸部病変と骨病変であるが、腹部、皮膚、神経、血液異常など様々な症状を呈することがある。胸部病変では、胸水(胸腔内に液体が溜まる)、血胸、乳び胸、縦隔病変、心嚢水による息切れ、咳、喘鳴、呼吸苦を起こす。骨病変は頭蓋骨から脊椎、骨盤、四肢骨と全身に骨溶解を起こす。最初は無症状であるが、進行すると骨痛、病的骨折や骨溶解による脚長差や欠損などの様々な症状を起こす。また腹水や脾臓病変、凝固異常(FDP、D-dimer 上昇、血小板数低下)、リンパ漏、リンパ浮腫なども起こす。 | |
5. 合併症 | |
前述の通り、病変部位によって異なるが、胸水、乳び胸によって窒息、呼吸不全や、心嚢水の貯留のため心タンポナーデを起こすと、致死的となる。また骨病変では、病的骨折、脚長差などの他、稀に頭蓋底骨を溶解し、髄液漏を繰り返したり、脳神経麻痺症状、難聴をきたす場合がある。リンパ漏、リンパ浮腫に局所の感染症を起こすこともある。 | |
6. 治療法 | |
残念ながら、標準的治療はない。局所病変に対しては、外科的切除や放射線治療、硬化療法が選択となる場合がある。胸水に対して胸腔穿刺、胸膜癒着術、胸管結紮術、胸腔腹腔シャント、放射線治療などを行う。また、高カロリー輸液、中鎖脂肪酸食、高タンパク食など栄養療法も行う場合がある。内科療法としてインターフェロンα、プロプラノロール、抗癌剤(ビンクリスチンなど)、ビスフォスフォネート、オクトレオチドなどの治療報告もあるが、治療効果は限られている。 | |
7. 研究班 | |
リンパ管腫症の全国症例数把握及び診断・治療法の開発に関する研究班 |