特発性基底核石灰化症(指定難病27)

とくはつせいきていかくせっかいかしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

脳内に石のような石灰化があると、強い衝撃を受けたら脳が壊れますか?

脳はそんなに脆いものではなく、一般の生活、通常の運動をしても全く問題ありません。

脳内の石灰が大きくなると脳圧が高くなりますか?

石灰が大きくなって脳圧が高まることは通常ありません。

脳に石灰化があっても何ともなく過ごす人もいますか?

石灰化の大きさと症状は必ずしも相関しません。ほとんど何も症状もなく過ごしている方もいます。

頭痛はこの病気に関係ありますか?

頭痛の頻度は、必ずしも一般の方と比較して多いということはないようです。ただし、家族性で、特定の遺伝子(PDGFB変異)をもった方では頭痛の頻度が高く、強いようです。

食事で何か注意することはありますか

特別にはありません。カルシウムの摂取をひかえる必要はありません。通常量でとってください。適度なビタミン、ミネラル摂取など偏りのない栄養バランスの良い食事に心がけてください。

生活上何か注意することはありますか?

アルコールをたくさん飲んでいる方は脳がより萎縮する傾向が見られるようです。アルコールをたくさん飲むことは控えてください。日々、適度な運動を心がけてください。睡眠はいわゆる脳内リンパ系の流れを良くすることから、十分な睡眠をとるようにしてください。

遺伝する病気ですか?

原因となる6つの遺伝子のうち、SLC20A2PDGFBPDGFRBXPR1の4つについては常染色体顕性遺伝(優性遺伝)、それ以外の2つ(MYORGJAM2)については、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)です。顕性遺伝(優性遺伝)の場合は、お子様が同じ病気を生じる可能性はだいたい50%くらいですが、潜性遺伝(劣性遺伝)の場合には、お子様が同じ病気を生じる可能性はほとんどありません。また、同じ遺伝子変異を持っている方でも、無症状で頭部CTのみ石灰化がみられる場合や、その病状に違いが見られることもあります。孤発例の場合、遺伝性は不明です。

遺伝子の検査はどのように行うのですか?

主に血液から、ゲノムDNAを抽出します。ゲノムDNAには、両親から受け継がれた遺伝情報が書き込まれており、遺伝子の検査でご本人のゲノムDNAの塩基配列を調べることによって、遺伝情報のなかに疾患発症につながる変化(変異と呼びます)があるかどうかを調べます。本疾患の原因となる遺伝子は、現在までに6種類が見出されていますが、現時点で原因遺伝子のすべてが解明されているわけではなく、家族性であっても診断確定に至らない場合が40%程度あります。

定期受診の理想的な間隔は?

特に決まった受診間隔はありません。ほとんど症状がなく、お薬なしで、経過観察されている場合には、年1回か、相談によっては数年に1回程度、かかりつけの難病指定医の先生の診察を受けるのが良いと思います。

治療法の確立に向けての進捗状況は?

現在、患者さんから疾患特異的(この病気に特徴的な)人工多能性幹細胞(iPS細胞)が作製され、神経細胞や血管内皮細胞に分化させて、その表現型(症状)も再現されております。また遺伝子(SLC20A2PDGFB)変異をもった疾患モデルマウスが作製され、脳内の石灰化が生じることが確認されております。今後、これらの疾患モデル細胞や疾患モデル動物を使って、病気の本態の解明や創薬スクリーニングが大いに進むことが期待されております。

経済的支援(診察・検査料,薬剤料,通院時の交通費割引等)はありますか?

生活上で介助が必要となった場合には、医療機関を受診し、申請し、指定難病と認定されると、医療費は補助されるほか、保健所保健師と療養環境について相談を行うことができます。指定難病の認定がない場合は保険内での診療になります。身体的不自由が強い場合は、身体障害者の認定を受けられると医療費等の補助が受けられます。65歳以上の方は、介護保険を利用して様々な介護サービスを受けることが可能です。また、障害者総合支援法の対象疾患となっているため、65歳未満の方では、同法に基づく自立支援給付を受けることができます。就労に関しては、ハローワークの障害者専門の援助窓口である、難病患者就職サポーターによる支援を受けることができます。相談窓口として担当医師、各医療機関のソーシャルワーカー、保健師、難病医療コーディネーターや各市町村役場などがあります。

この病気について、他者(子ども,親族,職場や地域の人々)にはどのように説明したらいいですか?

誰に説明するかによって異なりますが、たとえば、以下のような説明も考えられます。
例1:一般には「原因不明に脳のなかに石(石灰化)ができる病気です。根治的な治療薬はまだありませんが、急速に進行することはなく、死に至るような病気ではありません。症状は個人差が大きく、全くの無症状からパーキンソン病症状、ふらつきなど様々です。
例2:知人などには病名と現在の症状だけを伝えることで十分なことが多いものです。

患者会や家族会はありますか?

現在、ありません。

この病気に関する最新情報はどのようにしたら得ることができますか?

各種の情報は下記より入手できます。
岐阜大学脳神経内科(医療者向け)
http://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/hospital/fahr.html
日本医療研究開発機構(AMED)(研究情報)
https://www.amed.go.jp/news/seika/kenkyu/20200110-01.html

この病気の専門医一覧はありますか?

地域の難病指定医、主に脳神経内科医であれば対応してくれます。精神症状が強い場合、目立つ場合には精神神経科、心療内科の先生、小児の場合には小児科、特に小児神経専門医の先生にご相談ください。通常、この病気では小児期には症状がありません。他の先天代謝異常症であることもあります。
全国的には岐阜大学病院脳神経内科が中核病院となっております。もし、受診、セカンドオピニオンなどを希望される場合は、担当医、主治医の先生の紹介状と受診病院からの事前の予約( http://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/hospital/fahr.html)が必要です。

 

情報提供者
研究班名 神経変性疾患領域における難病の医療水準の向上や患者のQOL向上に資する研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年1月(名簿更新:令和6年6月)