もやもや病(指定難病22)

もやもやびょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

もやもや病と診断されました。生活を制限すべきでしょうか?

基本的には今症状が頻発していない患者さん、手術前の患者さん、手術直後で症状が安定していない患者さん以外は、生活の制限の必要はありません。

もやもや病とそうでない疾患の区別ははっきりしていますか?

誰もが理解でき、明瞭な形でもやもや病とそうでない疾患を区別することは現時点では困難です。合併疾患があるものは典型的もやもや病には入りません。合併疾患とは何かというと、脳腫瘍、レックリングハウゼン病(神経線維腫症Ⅰ型)、ダウン症候群などを指します。
放射線治療法後と動脈硬化によるものを除外して認定をしますが、動脈硬化による病態とはっきり区別できるかどうかは、あいまいな症例が存在します。今後研究が進むと動脈硬化ともやもや病の境界領域というのがもう少しクリアになると思います。最近の研究では、特殊なMRIで血管の外径を調べることが、もやもや病と動脈硬化の区別に役立つという報告があります。

もやもや病と診断されました。手術は必ず受けなければいけませんか?

基本的には今症状が頻発していない患者さんには手術の必要はありません。しかし、脳虚血症状を有している方、脳血流検査で血流低下が著しい方、あるいは過去に頭蓋内出血の既往がある16歳以上の成人もやもや病の方には手術を勧めるのが一般的です。また、小児の手術適応は、将来の脳虚血や出血予防のために、手術適応は広く考えられています。これらの観点を元に、もやもや病の経験豊富な医師が的確な検査や年齢、患者さんの状況を総合的に勘案して手術適応が決まります。

もやもや病に関係する遺伝子が発見されたようですが、もやもや病は遺伝するのでしょうか?

もやもや病は必ずしも遺伝する病気というわけではありません。たしかに、最近の研究では、もやもや病に関係した遺伝子(RNF213遺伝子)が発見されています。しかし、これは病気になる感受性が高くなる「感受性遺伝子」であって、病気の「原因遺伝子」ではありません。RNF213遺伝子の変異は、もやもや病を有さない一般人口にも約1~2%に認められるとされています。これはすなわち、日本全国ではこの遺伝子をもつ人が少なくとも約100万人いることを意味します。一方、もやもや病患者数は全国でも1~2万人と言われていますので、この遺伝子があっても発症しない人が大多数であるといえます。さらに、両親のうちいずれかがもやもや病で、RNF213遺伝子変異を2本の染色体の1本のみに持つと仮定した場合、子にその遺伝子が引き継がれる確率は理論的には1/2のはずですが、実際の統計では家族性のもやもや病は10~20%にすぎません。なかには家族内発症を高率に起こしている家系があることも事実ですが、もやもや病は遺伝だけで発症するのではなく、遺伝子の異常に他のなんらかの要因が加わることで発症するのではないかと推測されています。

忘れものや集中力低下などの困りごとが多く、学校の勉強がうまくいかなくなっています。どうすればよいでしょうか?

もやもや病では、脳梗塞や脳出血などの影響でさまざまな脳機能の偏りを生じることがありますが、明らかな脳梗塞や脳出血がなくても、脳の実行機能の弱さなどが原因で、学習上の困りごとが起こることがあります。知能そのものには大きな問題がないのに、いわば学習の入り口の段階でつまずきが起こっていることもあります。このような場合、困りごとがなぜ起こるのかを理解し、本人に合った対応や工夫を行うことで、学習でのつまずきを減らすことができます。
厚生労働省もやもや病政策研究班は、循環器病対策推進基本計画および脳卒中・心臓病等総合支援センターモデル事業とも連動する形で、病院と学校が協力して、就学困難をかかえるもやもや病患児への支援の参考となる冊子(「医療関係者・教育関係者のためのもやもや病就学支援マニュアル」)を作成・公表しています。
医療関係者・教育関係者のためのもやもや病就学支援マニュアル

 

情報提供者
研究班名 もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)における難病医療体制の整備や患者のQOL向上に資する研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和5年10月(名簿更新:令和5年6月)