チャージ症候群(指定難病105)

ちゃーじしょうこうぐん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「チャージ症候群」とはどのような病気ですか

CHARGE症候群は、Coloboma(眼の異常), Heart defects(心臓の異常), Atresia of choanae(口腔と鼻腔のつながりの異常), Retarded growth and development(成長や発達が遅いこと), Genital abnormalities(性ホルモンが不十分であること), and Ear anomalies(耳の異常)の頭文字より名付けられる症候群です。必ずすべての症状があるわけではないですが、これらの症状の多くをもつことを特徴とします。最近ではCHD7遺伝子関連疾患(CHD7 disorder)という呼び名が一般的となってきています。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

日本では、毎年30~50名ほどの新しい患者さんが生まれてくると推定されています。現在、把握されている患者さんの総数が100名程度であり、多くの患者さんはまだ診断されていないと推測されています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

どのような場合に生まれやすい、ということはありません。ほとんどの患者さんは家族の中にCHARGE症候群の方がおらず、偶発的に生まれてきます。

4. この病気の原因はわかっているのですか

CHD7遺伝子という遺伝子(1つ1つの細胞の中にある、細胞の働きを決める情報)が普通の配列(並び方)と異なるため、胎児期(お母さんのおなかの中にいるとき)に様々な症状が作られます。約70%の患者さんでCHD7遺伝子の変異がみられます。現在は遺伝学的検査が保険収載されています。遺伝学的検査を受ける際には、医療機関受診と遺伝カウンセリングが必要です。

5. この病気は遺伝するのですか

お子さんがチャージ症候群である場合には、その弟妹がチャージ症候群として産まれてくることは稀です。将来、患者さんの子供がおなじくチャージ症候群である確率は50%です。遺伝について、ご不安な点がある場合、臨床遺伝専門医などの 遺伝カウンセリング を受けられることをお勧めいたします。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

うまく哺乳ができない、呼吸がうまく出来ない、心臓の病気、という生命に関わる症状と、見たり・聴いたり・匂ったりする感覚の異常があります。上方の視野(見える範囲)が狭いため、顎を上げているお子さんも多いです。また、他のお子さんと比べて小柄で、発達がゆっくりと進みます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか。

症状をなくすことはできませんが、個々の症状を補うように主治医の先生と相談することで、患者さんが健やかに成長することを手助けすることが大事です。からだの多くの場所に障害があるため、医療チームで連携して個々の問題に対処していくことになります。
耳の聞こえが悪いときは、早い時期から補聴器をつけることで言葉を理解する力を育みやすくなります。眼が悪いときには、早い時期から眼鏡を用いることで、視野が狭く、視野が低くても、多くのものを患者さんに見せてあげることができるようになります。場面ごとに、患者さんが困っていることを患者さん・ご家族と医療スタッフで相談しながら、長期的な観点から患者さんが過ごしやすい環境を整えることがとても重要になります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

一概にチャージ症候群といっても、ひとつひとつの症状の有無には個人差があり、患者さんごとに様々な経過をとります。
産まれたばかりのころは、心臓の病気、うまく呼吸ができないこと、哺乳がうまく進まないこと、を解決することが生きていく上でとても重要です。また感覚器(見たり、聞いたりする器官)の障害を早くみつけてサポートすることが大事です。
幼少のころから、心臓の手術、機械を用いた呼吸の補助、胃液の逆流を防ぐ手術が必要になることがあります。いろいろなサポートが必要かも知れませんが、周りの環境に大変興味を持ち、走り回っている患者さんもたくさんいます。感覚器の障害や、ホルモンの不足は、長期にわたり病院に通い、患者さんに合った解決方法を模索していく必要があります。
チャージ症候群の遺伝子検査が可能になってから、およそ20年弱が経過しており、徐々に成人の患者さんで困っている症状などが明らかとなってきています。例えば、体調を崩した時のストレスホルモンの分泌に障害があったり、眼の異常・視力の異常で困ることが多かったりということです。未診断の患者さんが多くいることもあり、大人や老人になった時にどのような医療的な問題が起こるかは分かっていないことが多いです。成人した後のことについて、今後さらに色々なことが分かってくるでしょう。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

感覚器(見たり、聴いたりする器官)の異常が疑わしいときは、早期に医療機関を受診することが重要です。早く症状をみつけることができると、視力、聴力などをサポートすることが可能で、それを通して周囲の環境からよりスムーズに情報を得ることができるようになります。眼の障害、耳の障害のために、意思疎通が難しい場合は、3歳までにコミュニケーションのトレーニングを開始しておくことが意思疎通能力を育むためにとても重要であることが知られています。
赤ちゃんの時に哺乳ができないときは、口の運動や知覚がない状態が続くことになります。その間も手や器具を用いて、口の中に常に刺激を与えることで、成長してからモノを飲み込むことがうまくなり、食事への抵抗を減らすことができます。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

CHD7遺伝子関連疾患

11. この病気に関する資料・関連リンク

厚生労働省 難治性疾患克服研究事業; CHARGE症候群の理解と将来に向けて
Management of Genetic Syndromes, third edition; Wiley-Blackwell p.157- 168

 

情報提供者
研究班名 患者との双方向的協調に基づく先天異常症候群の自然歴の収集とrecontact可能なシステムの構築班
研究班名簿 
情報更新日 令和5年1月(名簿更新:令和6年6月)