レット症候群(指定難病156)
れっとしょうこうぐん
- 症状は以前獲得していた、運動や言葉などが失われるので退行現象は認めます。多くの患者さんでは長期の経過で、上肢機能の退行や歩行困難など全身の運動機能低下が進みますが、退行をおこす他の神経変性疾患と異なり、症状の安定期が認められたり、一時期症状が改善したり緩和したりする患者さんもいます。
退行する病気ということであれば、症状の経過は進行する一方なのでしょうか
- Arg133Cysなどの、ある特定の遺伝子の患者さんは意味のある言葉を話す事が認められたり、早く歩いたり、小走りができる方もおられます。Preserved speech variantと呼ばれる軽症例では、退行後も言語機能などが一部改善する事が知られています。
病気は重症の患者だけでしょうか
- 典型例は、大多数が女児に発症します。女性はX染色体が2本あり、どちらか1方のX染色体が機能として働けばよいと考えられています。母親がMECP2遺伝子変異を持っていても無症状の場合は、MECP2遺伝子変異のあるX染色体が不活化されて働かなくなり、もう一方の正常なMECP2遺伝子だけが働くX染色体不活化の偏り例も報告されています。そのような場合、一見正常な保因者の母親から生まれた男児の50%がレット症候群の患者さんとなる可能性が知られています。レット症候群の男児例では、体細胞モザイク変異も報告されています。これは、身体の中でMECP2遺伝子の変異がない細胞と変異がある細胞が混ざった状態になっていることです。また、非典型例の早発のFOXG1遺伝子は14番染色体長腕(14q13)に位置し、常染色体性顕性遺伝(優性遺伝)形式を取るため、男児にも発症します。X染色体上のCDKL5遺伝子変異による、早期発症のてんかん型も男児にも発症する事が報告されています。
男児には発症しないのでしょうか
- モデル動物では、予めMECP2遺伝子を働かなくしておいて、その後、遺伝子が働く遺伝子操作をしておくと、神経症状、生命の予後が回復する事が知られています。典型例のレット症候群では、MECP2遺伝子が存在するX染色体が女児では2つあり、MECP2遺伝子は、多すぎても様々な変異が出ることが知られています。どちらのX染色体に組換えた遺伝子が入るか予想がつかない事、細胞の外から入れたMECP2遺伝子量の制御が難しい事、遺伝子を運ぶウイルスベクターで副反応が否定できない事などまだ問題があります。レット症候群が不治の致死的な病気ではないので、不利益がむしろ大きくなる可能性があることが考えられています。更に遺伝子治療前には免疫抑制療法が必要であり、その間に運動機能など悪化する可能性もあり、現時点では解決すべき課題があります。しかし、未解明の課題を抱えていますが、米国で遺伝子治療の治験が始まっています。
遺伝子治療はできないのでしょうか
- MECP2遺伝子の変異があっても、レット症候群の症状を示さずに学習障害、自閉スペクトラム症、または上記に述べた、X染色体不活化の機構から、無症状の方がいることも知られています。従って、MECP2遺伝子変異の方が全てレット症候群でないのです。また、約1割のレット症候群の患者さんは、典型例であってもMECP2遺伝子の変異が見つからないことが知られています。従って、診断は現在でも、特有の病歴と、臨床症状によってなされます。
MECP2遺伝子の変異=レット症候群なのでしょうか
研究班名 | レット症候群とその周辺疾患の臨床調査研究班 研究班名簿 |
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情報更新日 | 令和6年10月(名簿更新:令和6年6月) |