慢性血栓塞栓性肺高血圧症(指定難病88)
まんせいけっせんそくせんせいはいこうけつあつしょう
- エコノミークラス症候群は「急性肺血栓塞栓症」ですが、中には「慢性肺血栓塞栓症」が基礎疾患としてあり、急性肺血栓塞栓症と同じような症状が出現することがあります。 エコノミークラス症候群は「旅行者血栓症」とも呼ばれており、長い時間航空機の狭い座席に座っていることにより、足の血液の流れが悪くなり、血管の中に血栓症を起こす病気です。「慢性肺血栓塞栓症」と診断された場合、足ないしは骨盤内の静脈に血栓があるかどうかの検査が必要になります。
エコノミークラス症候群は肺血栓症ですか?
- 慢性肺血栓塞栓症の場合は、何らかの理由により、肺動脈に血栓が起こりやすい状態が一生涯続くと考えられます。ワルファリンは新たな血栓ができることを予防する薬です。 新たな血栓が出来て、肺の血管がさらにつまることを予防するためには、薬は一生涯続けた方が安全と考えられます。
慢性肺血栓塞栓症と診断されましたが、ワルファリンはいつまで服用すれば良いのでしょうか?
- ワルファリンは血液を固まりにくくして、血栓ができるのを防ぐ作用があります。 血液が固まるには、ビタミンKが必要なのですが、ワルファリンは、そのビタミンKの働きを妨げることにより、血液を固まりにくくするのです。 ところが、納豆には、ビタミンKや、大腸でビタミンKを産生する納豆菌が多く含まれているため、ワルファリンの血液を固まりにくくする作用を弱めてしまいます。 このため、ワルファリンを飲んでいる方は、納豆の摂取を控える必要があるのです。また、納豆の他にも、クロレラ、青汁なども、納豆と同様にビタミンKを多く含むため、摂取を控えることが必要になります。また、ビタミンKを多く含む緑葉野菜をたくさん食べ続けることは控えてください。納豆の影響は数日間続くとされていますので、ワルファリンを服用中の場合には、間隔をあけても、納豆を食べることはできません。
ワルファリンを飲んでいる時は、どうして納豆を食べてはいけないのですか?
- 運動時の息切れなどの症状のある患者さんで、比較的太い肺動脈に血栓があり、他の重い病気がない患者さんが対象になります。しかしながら、人工心肺を用いて8時間以上もかかる大手術であり、熟練した外科医によって行われ、適応を決めてもらう必要がありますので、この病気を専門とする施設の外科医に相談することが重要です。
慢性肺血栓塞栓症と診断されましたが、どのような患者さんが手術(肺動脈血栓内膜摘除術)の適応になるのでしょうか?
- ヨーロッパで行われた多施設の研究では、死亡率は4.7%でした。症例数が多い施設では低く、年間手術件数10例以下:7.4%、11-50例:4.7%、50例以上:3.5%と報告されています。日本では経験のある施設から4〜5%の死亡率が報告されています。良好な長期生存率が報告されており、5年、10年の死亡回避率はそれぞれ73〜86%、69〜75%です。これらは非手術例よりも有意に良好です。 平均肺動脈圧は45mmHg以上から、25mmHg程度まで低下し、運動能力も著明に改善します。3分の2の例では酸素が必要なくなります。一方、合併症としては、術後肺炎等の感染症(18.8%)、肺高血圧症が残る例(16.7%)、脳合併症(11.2%)、出血(10.2%)、肺水腫(肺の血流再開で肺が水浸しになる)(9.6%)と報告されています。
手術の成績はどの程度でしょうか?また、合併症はどのようですか?
- 運動時の息切れなどの症状のある患者さんで、肺高血圧症を認め、原則として手術の適応とならない細い肺動脈のみに血栓が存在する患者さん、あるいは手術後にも肺高血圧症が残る患者さんが対象となります。しかしながら、高齢の患者さん、手術の説明を受けられても手術を希望しない患者さん、合併症があって手術が受けられない患者さんも対象となる場合がありますので、この病気のカテーテル治療に熟練した施設の医師と相談することが重要です。
慢性肺血栓塞栓症と診断されましたが、どのような患者さんがカテーテル治療の適応になるのでしょうか?
- 治療回数によりますが、肺動脈圧が12〜21mmHg低下し、運動能力も改善します。肺障害(水浸しになる)27%、血痰14%、肺動脈の解離(壁を傷つける)4%、気胸(肺が破ける)3%、血圧低下2%、肺動脈破裂(1%未満)がみられ、熟練度が合併症の頻度に影響します。