HTRA1関連脳小血管病(指定難病123)
1. 「HTRA1関連脳小血管病」とはどのような病気ですか
この病気ではHTRA1(High Temperature Requirement Serine Peptidase A1:ハトラワン)という遺伝子の変異によって非常に細い脳の血管(脳小血管といいます)が衰え、そのために脳に十分な血流を送れなくなって神経障害がおこると考えられています。歩行のふらつき、無気力やいらいら感、注意力や記憶力の低下などの神経障害による症状と、頭髪の薄さ、腰痛といった神経以外の障害による症状がおこる病気です。この遺伝子を、私達は2個持っていますが、2個とも異常があると、青年期に発症し重症となります。1個のみ異常があると、中年期以降の発症となります。程度は、極めて軽いものから、重いものまで様々です。2個とも異常がある場合禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症(CARASIL;カラシル)といいます。カラシルと、1個の遺伝子異常で起こるものを合わせてHTRA1関連脳小血管病と呼びます。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
カラシルの患者さんは、2019年9月までに本邦で7家系8例の患者さんが確認されています。1個の遺伝子の異常で病気になられている方は、2019年9月までに本邦で11家系13例の方が報告されています。しかし、この疾患については調査がまだ不十分です、もっと多くの患者さんがいる可能性があります。
3. この病気の原因はわかっているのですか
HTRA1(High Temperature Requirement Serine Peptidase A1)という遺伝子の変異によっておこることがわかっています。この遺伝子は、タンパクを分解する働きがあります。この異常で、分解できなくなったタンパクが血管に溜まって病気になると考えられています。
4. この病気は遺伝するのですか
カラシルの患者さんからは、お子さんに一つの遺伝子異常が必ず遺伝するので、軽症な脳小血管病となります。1つの遺伝子異常をもっている、軽症の方からは50%の確率でお子さんに遺伝します。しかし、1つの遺伝子異常だけの場合には、病気の症状がでやすくなる、遺伝子以外の要因があると考えられていて、遺伝子とも、病気が目立たない方もいると考えられます。
5. この病気ではどのような症状がおきますか
カラシルの主な症状は、歩行のふらつき、無気力やいらいら感、注意力や記憶力の低下、脳卒中(突然の片麻痺など)です。症状は、ゆっくりと進みます。病気が進行すると車椅子を使用しなければならなくなります。その他に、頭髪の薄さ、腰痛を経験されます、いずれかを40歳までの間に経験します。一方、1つの遺伝子にだけ異常を持っている場合は、これらの軽い症状を、より、高年で経験します。
6. この病気にはどのような治療法がありますか
この病気では、脳梗塞に対して使用されている薬の有効性は証明されていません。一般的な、高血圧、高脂血症、糖尿病に対する治療、禁煙など、血管の変化を防ぐ治療は効果があると考えられています。
7. この病気はどういう経過をたどるのですか
症状はとてもゆっくりと進みます。進み方は、同じ病気でも、お一人お一人で差があります。脳梗塞を起こした場合などは、急に症状が進むことがあります。
8. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
症状が急激に悪化した場合は、速やかにかかりつけ医に連絡してください。禁煙、飲酒量を減らすといった生活習慣の改善によって、進行をある程度遅くすることができる可能性があります。
9. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
該当する病名はありません。
10. この病気に関する資料・関連リンク
GeneReviews[Internet]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK32533/
用語解説
白質脳症(はくしつのうしょう):大脳のうち、白質とよばれる部分の病変によって、症状をおこす病態の総称。
大脳(だいのう):脳のなかで最も大きい部分。
遺伝子(いでんし):子孫に伝達するための遺伝情報の単位。
脳梗塞(のうこうそく):脳が血流供給されなくなった際におこる組織の障害。
研究班名 | 成人発症白質脳症の実態調査とレジストリ作成の研究班 研究班名簿 |
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情報更新日 | 令和6年4月(名簿更新:令和6年6月) |