レーベル遺伝性視神経症(指定難病302)
1. 「レーベル遺伝性視神経症(レーベル病)」とはどのような病気ですか
細胞のなかでエネルギー産生を行う、 ミトコンドリア という器官の遺伝子の 変異 により、 網膜 の一部の細胞が選択的に障害される病気です。男性に多い疾患で、10〜30歳代に発症の大きなピークがあり、40歳代前後にもう一つのピークがあります。
発症すると数週間から数ヶ月の間に、両眼の視力低下、中心部の視野欠損が起こります。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
ヨーロッパではいくつかの統計で、人口10万人あたり2-3人と推測されています。また国内では、2015年に全国ではじめて本格的な調査が行われ、患者数は約10000人前後と推測されています。
3. この病気はどのような人に多いのですか
ミトコンドリア遺伝子に変異を持つ人に発症しますが、 遺伝子の変異 があるからといって全員が発症するわけではなく、何らかの環境因子など、他の要因が加わって発症すると予測されています。
4. この病気の原因はわかっているのですか
ミトコンドリア遺伝子変異が、細胞の中でのエネルギー産生時の活性酸素などの酸化ストレスを増大して、網膜の神経細胞死を引き起こすと考えられています。喫煙、性ホルモン、外傷などが、この細胞死の修飾因子だろうと推測されています。ただ、これらの要因がどのようにプロセスで関係しているかの詳細は分かっていません。
5. この病気は遺伝するのですか
ミトコンドリア遺伝子は原則として、すべて母親から受け継ぎます。従って母親から子に遺伝し、父親からは遺伝しないと考えられています。ですので、発症者は男性に多いのですが、男性患者の子孫には病気は受け継がれません。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
片眼の視力低下と中心部の視野欠損から始まり、数週間から数ヶ月の間にもう片眼にも同じ症状が起こります。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
現在、コエンザイムQ10の誘導体であるイデベノンの有効性が示されつつあります。
基礎的な研究では、イデベノンはミトコンドリアのエネルギー産生を助け、網膜の細胞を細胞死から守る働きがあることが分かっています。実際の患者で有効かどうかは、国内外で研究が進んでいるところです。
この他、コエンザイムQ10、ビタミンC、ビタミンB12の内服や、眼底の血流改善を目的とした点眼薬・内服薬を用いることもあります。海外では治験として、ミトコンドリア遺伝子の遺伝子治療も行われています。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
視力低下や視野欠損が進みますが、完全に失明することは非常にまれです。
またまれですが、一部の患者では、視力が部分的乃至おおむね元通りに改善することもあります。
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
喫煙が発症と進行のリスクになることが証明されていますので、禁煙が重要です。
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
該当する病名はありません。
11. この病気に関する資料・関連リンク
Leber遺伝性視神経症認定基準 日眼会誌 119巻5号
/upload_files/LHON.pdf
研究班名 | 網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究班 研究班名簿 |
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情報更新日 | 令和5年1月(名簿更新:令和6年6月) |