アペール症候群(指定難病182)

あぺーるしょうこうぐん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「アペール症候群」とはどのような病気ですか

FGFR2遺伝子の 変異 により先天的な頭蓋骨や顔面骨(基本的に下顎を除く)の縫合が早期に癒合するため形成異常がおこり、その結果脳の発達が妨げられたり、眼球が突出したり、呼吸が障害されたりします。また手および足の指が互いに癒合して、肘が曲がりにくいこともあります。心臓奇形、口蓋裂や精神運動発達遅滞を合併することもあります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

日本での正確な数値は明らかではありませんが、神奈川県の先天異常モニタリング調査では15万人に1人でした。神奈川県立こども医療センターの受診者数と合わせて考えると、日本での年間発症数は約8人程度と予想されます。

3. この病気はどのような人に多いのですか

頭蓋骨癒合症と合指症を特徴とする人たちの中に見られます。多くの場合が突然変異によるものなので、なりやすい人はいません。

4. この病気の原因はわかっているのですか

原因遺伝子はFGFR2で、ほとんどの場合が突然変異によるものです。しかし、病態のメカニズムはほとんど解明されていません。FGFR2遺伝子の遺伝学的検査は保険収載されています。遺伝学的検査を受ける際には、医療機関受診と遺伝カウンセリングが必要です。

5. この病気は遺伝するのですか

多くの場合、患者自身は突然変異で発症しています。しかし、患者の次世代へ遺伝する可能性は50%です。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

頭蓋骨が小さいことによる頭痛や嘔吐・吐き気などの頭蓋内圧 亢進 症状を起こすことがあります。また、顔面骨が小さいことにより眼球が目立ったり、呼吸がしにくくなったり、噛み合わせが不良になります。手足の指が互いに癒合しています。口蓋裂や精神運動発達遅滞を認めることがあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

頭蓋や顔面骨を広げる手術を行います。近年では、広げたい骨の所に延長装置を取り付けて毎日少しずつ伸ばしていく骨延長法を行うことが多くなっています。また、癒合している手の指を分離する手術や口蓋裂の手術を行います。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

症状の程度にもよりますが、適切な時期に手術を受けることで 予後 は改善します。しかし、成人までに複数回の手術を要します。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

頭蓋内圧亢進症状による頭痛や嘔吐・吐き気、あるいは呼吸状態に注意を払う必要があります。頭蓋顎顔面に限らず、呼吸や循環、四肢の機能、さらには青年期以降のこころのケアなど年齢に応じた総合的な医療管理と生活管理が必要になります。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

該当する病名はありません。

 

情報提供者
研究班名 患者との双方向的協調に基づく先天異常症候群の自然歴の収集とrecontact可能なシステムの構築班
研究班名簿 
情報更新日 令和5年1月(名簿更新:令和6年6月)