遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん(指定難病148)
1. 「遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん」とはどのような病気ですか
けいれん発症までの発達が正常な生後12カ月未満(ほとんどは3カ月以内)の乳児におこるてんかん性脳症(頻回に生じるけいれん発作のため知的障害や行動障害が起る状態)で、発作中に脳波の焦点(発作の出所)が反対側または同じ側の離れた部分に移動し、様々な焦点発作症状を示し、後にあちこちからの発作がほぼ連続するようになるてんかんです。発作中に脳波を記録し、脳波上のてんかん活動が移動することを確認することで診断されます。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
非常にまれな病気で、英国の全国調査では、年間発症率は出生100万人に2.6-5.5人、 有病率 は小児の100万人に1.1人という報告があります。わが国では、1997年~2014年までに、論文・学会・地方会・研究会で37例が報告されています。男女差はありません。
3. この病気はどのような人に多いのですか
特にどんな人に多いということはありません。生後12カ月未満(ほとんどは3カ月以内)の乳児に起りますが、多くの場合、けいれんが起るまでは発達に問題はありません。遺伝子変異などてんかんを発症する素因があることが原因と考えられており、あとから何かの原因が加わって起るのではありません。
4. この病気の原因はわかっているのですか
かつては原因不明とされていましたが、現在では一部の患者さんから遺伝子の変異が見つかっており、最も頻度が高いのはKCNT1遺伝子の変異です。
5. この病気は遺伝するのですか
常染色体潜性(劣性)遺伝形式の遺伝子変異が原因の場合には、兄弟姉妹で発症することがあり得ます。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
手足を小刻みに震わせる、つっぱる、がくがくさせる、まぶたや口元をぴくぴくさせる、眼や頭を片方に向ける、手足の力がぬけるなどの体の一部の運動症状のほか、動作が止まる、ぼんやりするなどの、非運動症状がみられます。後には全身に広がってがくがくさせる発作もありますが、ほとんどの患者さんではじめから2種類以上の発作を示します。この病気の初期には呼吸を止める、顔色が青くなる・赤くなる、唇が紫色になるなどの症状が目立つことがあります。
発作が増えるとともに、今までできていたことができなくなったり(退行)、筋肉がやわらくなり、体がぐにゃぐにゃする症状(筋緊張低下)がでてきます。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
抗てんかん発作薬をはじめとする内科的治療が中心です。しかし、発作は止まりにくく、通常、一般的な抗てんかん薬やビタミンB6、ACTH療法、ケトン食療法ではなかなか効果が得られないと言われています。抗てんかん発作薬の中では、臭化カリウムが有効であったとの報告があります。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
てんかん発作は難治で、発症から間もなくは発作が非常に多いですが、年齢と共に発作の回数は減少する傾向があります。
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
てんかんの発作以外では、運動や 認知機能 の発達に遅れが生じることが多いため、それらの症状や程度に応じた支援が必要になります。
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
該当する病名はありません。