ウィリアムズ症候群(指定難病179)

うぃりあむずしょうこうぐん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「ウィリアムズ症候群」とはどのような病気ですか

ウィリアムズ症候群は、成長と発達の遅れ、視空間認知障害(絵を描き写すのが苦手など)、心血管疾患(特に大動脈弁上狭窄)、高カルシウム血症、顔貌の特徴などをもつ症候群です。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

1〜2万人に1人と推定されています。ただ、心疾患がない場合などでは、未診断の人もいると考えられます。

3. この病気はどのような人に多いのですか

先天性 心疾患(特に大動脈弁上狭窄、肺動脈狭窄)の発見を契機として乳幼児期に診断されることが多いです。人種差や性差はなく、どのご夫婦のお子さんとしても生まれてくる可能性があります。

4. この病気の原因はわかっているのですか

7番染色体(7q11.23)の微細な欠失(顕微鏡では発見できないほどのサイズ)が原因です。2本ある7番染色体のうち1本に欠失が認められます。この欠失範囲には約20個の遺伝子が含まれ、その中でエラスチン遺伝子の欠失は大動脈弁上狭窄などの心血管疾患に、LIMK1遺伝子の欠失は視空間認知障害に関係することがわかっています。

5. この病気は遺伝するのですか

お子さんがウィリアムズ症候群である場合、そのご兄弟・姉妹がウィリアムズ症候群になることは稀です。一方、将来、患者さんの子供には50%の確率でウィリアムズ症候群が遺伝します。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

見られやすい症状として、成長と発達面では、低身長(軽度)、発達遅滞、認知特性(過敏性、音楽への嗜好、視空間認識の弱さ)が認められます。身体面では、心血管疾患(大動脈弁上狭窄、肺動脈狭窄、心房・心室中隔欠損)、腎泌尿器疾患(腎奇形、腎石灰化、膀胱憩室)、内分泌疾患(高カルシウム血症、甲状腺機能低下、糖尿病)、消化管疾患(胃食道逆流、便秘、 直腸脱 、結腸憩室、ソケイヘルニア)、眼科疾患(斜視、遠視など)、耳鼻科疾患(難聴、中耳炎)、整形外科疾患(脊椎弯曲、関節弛緩(幼少期)、関節拘縮(青年期))、歯科疾患(矮小歯、咬合不全)などがあります。ただし、すべての患者さんにすべての症状が起きるわけではなく、一人一人の患者さんの症状はそれぞれ違います。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

根本的な治療法はありませんが、定期診察を通じて合併症に早期対応していくことが大切です。また、理学療法、作業療法、言語指導、心理カウンセリングなどの療育的な支援も可能です。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

身長は小柄で軽度の低身長のことが多いです。妖精様の顔貌(広い額、腫ぼったい上まぶた、低い鼻、上向きの鼻孔、厚い唇、開いた口など)や特徴的な性格(社交的でおしゃべり、音楽が好き、人の好い性格など)が見られます。運動発達は通常より遅く、歩行は2歳ぐらいが平均です。乳幼児期には摂食障害(離乳食の進みが遅い、偏食が強いなど)、夜眠らないなど、過敏性が目立ちやすいですが、徐々に安定していきます。学童期では、注意欠陥、不安障害などのために心理カウンセリングを含めた対応が必要になる場合もあります。知的発達の遅れは軽度から中等度ですが、着実に成長していく力があります。視空間の認知障害があり、人やものにぶつかりやすい、迷子になりやすい、絵が上手く描けない、などの症状が見られます。身体合併症では、末梢性の肺動脈狭窄は年齢とともに軽快する傾向がありますが、逆に大動脈弁上狭窄は進行する可能性もあり、左心室の出口が塞がれる状態になり、進行すると左心室の肥大から不整脈や失神をきたす可能性が出てきます。また冠動脈に高い血圧がかかり、内膜が分厚くなり、冠動脈が細くなって狭心症を起こすこともあります。したがって、十分な心臓合併症には継続的な評価が必要です。成長につれ、脊椎側弯、心臓弁異常、膝腱やアキレス腱の拘縮(硬くなる)、高血圧、糖尿病、膀胱憩室、難聴の進行、不正咬合(歯並びの不整)などにも注意が必要です。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

身体面では、特に心血管系合併症(8で述べた末梢性の肺動脈狭窄、大動脈弁上狭窄)への注意が欠かせません。必ず、小児循環器専門医による定期診察を受けましょう。また便秘にならない注意も必要です。視空間認知の弱さについては、例えば靴の左右をカラーテープで色分けするなど、物の位置を把握しやすくする援助などが効果的です。不安が強いときには無理強いせず、楽しく取り組むことができるように課題の難しさを調整して、成功体験が得られるような配慮ができるとよいです。また、苦手なことよりも、好きな音楽などの活動をしっかり伸ばすことを通して、本人の楽しみと自信を育むことも大切です。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

家族性大動脈弁上狭窄

11. この病気に関する資料・関連リンク

① 日本ウィリアムズ症候群の会『エルフィン関西』
https://sites.google.com/site/elfinkansai/
② ウイリアムス症候群-親のためのガイドライン-
https://drive.google.com/file/d/1mnZqsHOtLIjTSmC59T9Fbr7CMuRXaA8y/view
③ ウイリアムス症候群-教師のためのガイドライン-
https://drive.google.com/file/d/15k6_KmVYUzTubsPujXdOKEEmu1_BYbd8/view
④ 成人期のウイリアムス症候群-家族と専門家のためのガイドライン-
https://sites.google.com/site/elfinkansai/home/yi-litsu-qing-baopeji
⑤ GRJ (GeneReview Japan)ウィリアムズ症候群
http://grj.umin.jp/grj/ws.htm
⑥ ウイリアムス症候群研究について(CREST発達障害のエピゲノム解析Williams症候群サブグループ)
https://sites.google.com/site/elfinkansai/home/yi-litsu-qing-baopeji
⑦ 小児・成育循環器学. 日本小児循環器学会編集. 診断と治療社, 2018.
⑧ 心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン(2024年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/03/JCS2024_Imai.pdf

 

情報提供者
研究班名 先天性心疾患を主体とする小児期発症の心血管難治性疾患の救命率の向上、円滑な移行医療、成人期以降の予後改善を目指した総合的研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和5年1月(名簿更新:令和6年7月)