マルファン症候群/ロイス・ディーツ症候群(指定難病167)

まるふぁんしょうこうぐん/ろいす・でぃーつしょうこうぐん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「マルファン症候群/ロイス・ディーツ症候群」とはどのような病気ですか

マルファン症候群は、全身の結合組織(細胞と細胞をつなぐ組織)の働きが生まれつき弱いために、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ裂ける、心臓の弁がうまく閉じない、など)などを起こす病気です。
ロイス・ディーツ症候群も全身の結合組織の働きが生まれつき弱いため、マルファン症候群とよく似た心臓血管の症状や骨格の症状を起こしますが、水晶体がずれることは少なく、身長も高くないことなどの違いがあります。
症状はひとりひとり異なりますが、この病気の原因となる遺伝子の変化は、それを持つ親から子へと伝わります(遺伝します)。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

マルファン症候群はおよそ5,000人に1人がこの病気の遺伝子の変化をもっていると報告されています。ロイス・ディーツ症候群の有病率は不明ですが、マルファン症候群よりは少ないと言われています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

マルファン症候群/ロイス・ディーツ症候群の原因になる遺伝子の変化をもったひとがこの病気になります。男女差や人種により頻度が変わるわけではありません。ただし、遺伝子の変化があっても症状が現れるまでに年月がかかることがあります。また、同じ遺伝子の変化を持っているひとでも症状に差がある場合もあります。

4. この病気の原因はわかっているのですか

マルファン症候群/ロイス・ディーツ症候群は遺伝子の変化により起こります。マルファン症候群の原因遺伝子はFBN1であり、ロイス・ディーツ症候群ではTGFBR1,TGFBR2,SMAD3,TGFB2,TGFB3SMAD2が原因遺伝子として判明しています。両疾患ともに遺伝学的検査は保険収載されていますが、検査の際には、医療機関受診と遺伝カウンセリングが必要です。

5. この病気は遺伝するのですか

常染色体顕性遺伝疾患ですので、マルファン症候群/ロイス・ディーツ症候群の親からマルファン症候群/ロイス・ディーツ症候群のお子さんが生まれる確率は50%です。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

マルファン症候群/ロイス・ディーツ症候群では、1.に挙げた特徴的な症状(細く長い指など骨格の症状、心臓血管の症状、マルファン症候群では高身長と目の症状)は、すべてあらわれるとは限りません。血管の症状だけで身体の症状が軽い場合もあります。
どれくらい生活に制限がかかるかは、心臓や血管の症状の重症度に関係します。心臓や血管の症状は、弁の働きが悪くなって息切れがしたり(弁膜症)、血管の膨らみがすすんで壁が裂けたりする(大動脈解離)ことが無ければ、自覚症状としてあらわれませんが、突然に血管が裂けると命に関わる大きな出来事になることがあります。骨格の症状が強い場合には美容上の問題ばかりでなく、呼吸機能に影響がみられたり、腰痛など痛みの原因になることがあります。
また、肺に穴が開く 気胸という状態も起こることがあります。眼の症状としては強い近視・乱視や水晶体のずれによる視力障害などがあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

大動脈の膨らみが進んだ場合(大動脈瘤)や、大動脈解離が起こってしまった場合には、大動脈を人工血管に置き換える手術が必要になる場合があります。最近では、あらかじめ予定された手術の成績はかなり良くなっています。一方、一旦、大動脈解離がおこってしまうと、手術成績は悪くなり、その後の再発の可能性も高まります。大動脈の膨らみが進んできたら、専門医により適切に薬による治療( β遮断薬 やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB))を受けて、動脈の変化を極力抑える必要があります。弁膜症により心臓への負担が大きくなった場合には、弁の手術などが必要になることがあります。骨格の症状が強い場合にも手術が行われることがあります。眼の症状も水晶体のずれが大きい場合には手術が行われることがあります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

マルファン症候群では、病気であることを知らないままに放置し、大動脈解離など命に関わる合併症が起こってから、はじめて診断されることも多く、30代半ばで命を落とされるかたも少なくありませんでした。今では、早いうちから適切な治療(手術を含む)を受けることで、普通の方と同じように高齢になっても元気に過ごされる方も少なくありません。
ロイス・ディーツ症候群では、一般的にマルファン症候群と比べて血管病変がより広範で重症化しやすい傾向があるとされ、子どもの頃から積極的な治療を必要とする方や、大動脈瘤が重度でなくても解離を発症する方がおられることが知られていますが、一方で、骨格病変が主で血管病変は軽症のかたもおられるなど、個人差が大きいです。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

動脈の膨らみの程度が軽い場合には日常生活での注意点はありませんが、定期的な病院受診と検査により、動脈の膨らみの変化を確認する必要があります。動脈の膨らみが進んできたら、治療を受けるとともに血圧が上がるような行動(重い物を持ち上げる、息こらえの必要な運動、激しい運動、など)は避ける必要があります。大動脈解離が起こった場合にはなおさらで、専門医師の指示に従う必要があります。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

家族性大動脈瘤・解離

11. この病気に関する資料・関連リンク

a)Gene Review Japan(日本語版)
(マルファン症候群)
http://grj.umin.jp/grj/marfan.htm
 
(ロイス・ディーツ症候群)
http://grj.umin.jp/grj/lds.htm
 
b)マルファン症候群患者会
マルファンネットワークジャパン
http://www.marfan.gr.jp/
 
日本マルファン協会
http://www.marfan.jp/
 
国際マルファン症候群団体連合
http://www.marfanworld.org/

 

情報提供者
研究班名 患者との双方向的協調に基づく先天異常症候群の自然歴の収集とrecontact可能なシステムの構築班
研究班名簿 
情報更新日 令和6年4月(名簿更新:令和6年6月)