奇形症候群分野|ヴァーター症候群(平成23年度)
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1. 概要 | |
ヴァーター症候群は、V=椎体異常、A=肛門奇形、TE=気管食道瘻、R=橈骨奇形および腎奇形という5徴候の頭文字の組み合わせで命名されている。ヴァーター症候群において、多系統にわたる先天異常が発症する機序は不明である。異常を持つ臓器の発生時期の多くが、原腸形成期であることから、この時期に胚の広い範囲に障害が起きていると推測されている。先天異常に対して外科的治療を進めるとともに、成長発達のフォローが必須である。 | |
2. 疫学 | |
海外の文献によると出生5千人に1名程度と予測。我が国の発生頻度は不明。 | |
3. 原因 | |
ヴァーター症候群において、多系統にわたる先天異常が発症する、機序は不明である。異常を持つ臓器の発生時期の多くが、原腸形成期であることから、この時期に胚の広い範囲に障害が起きていると推測されている。母体糖尿病やトリソミー18の部分症状としてヴァーター連合の症状を呈する場合がある事から、催奇形因子や遺伝子異常など、複数の異なる原因により類似する病態を呈すると考えられている。このため、「症候群」という用語の代わりに「連合」という用語で呼ばれる場合がある。ここで連合とは、高頻度に併存する奇形の組み合わせを指す。 | |
4. 症状 | |
ヴァーター症候群は、V=椎体異常、A=肛門奇形、TE=気管食道瘻、R=橈骨奇形および腎奇形という5徴候の頭文字の組み合わせで命名され「VATER 5徴候の2徴候以上」として診断されることが多い。5徴候に替わって心奇形・中枢神経奇形などの他徴候を合併する症例が多く、上記の暫定基準は感度・特異度の観点から不十分・不適切である。 | |
5. 合併症 | |
V=椎体異常、A=肛門奇形、TE=気管食道瘻、R=橈骨奇形および腎奇形という5徴候に加えて、C=心奇形(cardiac)、L=四肢奇形(limb)が合併する事もあり、この場合、VACTERL連合と称する。循環器・呼吸器という生命維持に必須の臓器の障害に運動器の障害(橈骨奇形・側彎)を伴う、慢性的かつ持続的な疾患であり、生活面での長期にわたる支障を来たす。成長障害や発達遅滞を認める症例では、5歳以降にファンコニ貧血(骨髄不全)を発症する事がある。 | |
6. 治療法 | |
多臓器にわたり障害が発症する機序は全く不明である。発症機序が未解明であることから、効果的な治療法は未確立である。多臓器に合併症をきたすため、出生直後から多面的な医療管理を必要とする。乳幼児期早期の生命予後を決めるのは先天性心疾患と呼吸器障害・消化管奇形である。すみやかに食道・気管の異常(食道気管瘻・食道閉鎖)、鎖肛・心奇形の評価と治療を進める。必要に応じて、外科的治療をおこなう。併せて腎機能の評価、橈骨奇形の手術を進める。成長障害を合併することが多く、栄養・成長・リハビリ等の問題について、早期介入・継続的なフォローを必要とする。 | |
7. 研究班 | |
ヴァーター症候群の臨床診断基準の確立と新基準にもとづく有病率調査およびDNAバンク・iPS細胞の確立 | |