進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(指定難病338)

しんこうせいかぞくせいかんないたんじゅううったいしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「進行性家族性肝内胆汁うっ滞症」とはどのような病気ですか

進行性家族性肝内 胆汁 うっ滞症(PFIC)とは、さまざまな遺伝子変異により肝細胞から胆汁が排泄できなくなり、肝細胞内に胆汁がうっ滞し、肝細胞が障害されることでおきる病気です。常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)という遺伝形式をとり、その原因遺伝子によってPFIC1型から11型までが知られています。乳児期から黄疸が持続し、しだいに痒みも強くなります。胆汁うっ滞による肝障害が持続すると、肝臓はしだいに線維化が進行して硬くなり肝硬変となります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

我が国では、約100人ぐらいと推定されます。

3. この病気はどのような人に多いのですか

生まれつきの病気で、保因者の父親と保因者の母親から生まれた場合、4分の1の確率で生まれます。

4. この病気の原因はわかっているのですか

PFICの原因遺伝子とその遺伝子がコードする蛋白はそれぞれ、PFIC1型(遺伝子ATP8B1;蛋白FIC1)、PFIC2型(遺伝子ABCB11;蛋白BSEP)、PFIC3型(遺伝子ABCB4;蛋白MDR3)、PFIC4型(遺伝子TJP2;蛋白TJP2)、PFIC5型(遺伝子NR1H4;蛋白FXR)、PFIC6型(遺伝子SLC51A;蛋白OSTα)、PFIC7型(遺伝子USP53;蛋白USP53)、PFIC8型(遺伝子KIF12;蛋白KIF12)、PFIC9型(遺伝子ZFYVE19;蛋白ZFYVE19)、PFIC10型(遺伝子MYO5B;蛋白MYO5B)、PFIC11型(遺伝子SEMA7A;蛋白SEMA7A)、PFIC12型(VPS33B、VPS33B)です。いずれも肝細胞から胆汁を排泄する機能に関わる遺伝子の変異です。

5. この病気は遺伝するのですか

常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)という遺伝形式で発症する病気です。患者さんが親となる場合、パートナーが保因者の場合のみ、2分の1の確率で発症します。発症しなかった場合、子どもは全員保因者となります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

乳児期からの長引く黄疸として発症し、体重増加不良、低身長、肝脾腫、著明な瘙痒感を呈します。血液検査では直接ビリルビン、総胆汁酸および肝逸脱酵素の高値を呈しますが、一般的にγ-GTP値は上昇しません。その他、PFIC1型は、胆汁うっ滞性肝障害とともに、肝外症状として下痢や膵炎、難聴をきたすこともあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

内服薬として、ウルソデオキシコール酸、フェノバルビタールと脂溶性ビタミン(ビタミンA,D,E,K)があります。それに特殊ミルクとして必須脂肪酸強化MCTフォーミュラ(MCTミルク)が用いられています。ウルソデオキシコール酸は、肝障害予防目的で初期の段階から使用されます。また、抗結核薬であるリファンピシンも一時的に有効であることが多いです。痒みの軽減や病気の進行を遅らせるために、胆汁が再吸収されないようにする部分胆汁瘻という手術を行う場合があります。また現在、いくつかの新しい薬が開発過程にあります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

内服薬や脂溶性ビタミン補充、MCTミルクで治療を行うも肝障害が進行して肝硬変となれば、肝移植の適応となります。肝移植後の予後は比較的良好ですが、PFIC1型は、下痢や脂肪肝となるため移植後も注意が必要です。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

まず、ビタミンK欠乏症による血液凝固機能低下時には、頭部など出血に注意する必要があります。また、ビタミンDも不足しやすいので骨折にも注意して下さい。内服薬やMCTミルクで状態が安定すれば、外来通院が可能となりますが、成長や発達が順調かみていく必要があります。痒みが強いので、皮膚を直接搔かないように注意して下さい。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

特にありません。

11. この病気に関する資料・関連リンク

乳児黄疸ネット
https://plaza.umin.ac.jp/icterus/

情報提供者
研究班名 小児期発症の希少難治性肝胆膵疾患における医療水準並びに患者QOLの向上のための調査研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和6年6月)