TRPV4異常症(指定難病341)
1. 「TRPV4異常症」とはどのような病気ですか? |
共通の骨や関節の症状がみられる先天性の骨の病気のひとつです。背骨は椎骨という骨がつながってできています。椎骨は、その前方が椎体でできています。その椎体の高さが減少して平たくなる(扁平化)症状、関節の腫大(腫れること)および拘縮(動きが制限されること)、低身長などを認めます。原因はTRPV4遺伝子の変異により発症します。この病気はいくつかの特徴によってさらに細かく分類されており、①変容性骨異形成症Metatropic dysplasia、②脊椎骨端骨幹端異形成症Maroteaux 型(偽性Morquio 症候群2 型)Spondyloepimetaphyseal dysplasia, Maroteaux type (pseudo-Morquio syndrome type 2)、③脊椎骨幹端異形成症Kozlowski 型Spondylometaphyseal dysplasia, Kozlowski type、④短体幹症Brachyolmia, autosomal dominant type、⑤短指を伴う家族性指関節症Familial digital arthropathy with brachydactyly 等が含まれます。 |
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか? |
正確には不明ですが、日本全体で100人未満と推定されています。日本整形外科学会 骨系統疾患 登録(1990年~2022年)での総人数は41名で、うち成人患者さんの人数は不明です。また先天性骨系統疾患の医療水準と患者QOLの向上を目的とした研究班の2022年時点の調査では、人数は12名でうち成人患者さんは6名とされています。 |
3. この病気はどのような人に多いのですか? |
特定の人に多いという傾向はありませんが、カップルのいずれかがこの病気の場合には、そのお子さんは病気の確率が50%になります。(5.遺伝の項目を参照ください。) |
4. この病気の原因はわかっているのですか? |
TRPV4 (transient receptor potential cation channel, subfamily V, member 4)の遺伝子変異により、TRPV4というタンパク質の働きに異常が生じることが原因です。TRPV4は人の体の細胞にあって、細胞がカルシウムを取り込む調節をするタンパク質(カルシウムイオン透過性チャンネル)です。変異したTRPV4 の働きが強くなり(機能獲得型変異)軟骨の一部が骨に変わること(内軟骨性骨化)が障害されて発症すると考えられていますが、発症メカニズムの詳細は明らかではありません。また、遺伝子の変化が病気の原因ですが、それと症状との関連に関しても不明な点が多いです。 |
5. この病気は遺伝するのですか? |
先天性の病気ですが、ほとんどは遺伝ではなく、健常なカップルが妊娠されて、そのお子さんが胎児期(ほぼ受精時)に遺伝子の変異を生じて発症します(孤発性)。その場合は基本的には遺伝ではないため、その次のお子さんが同じ病気になる可能性は極めて低いです。ただし、カップルのいずれかが、この病気の場合には、常染色体顕性遺伝(優性遺伝)という遺伝形式をとり、そのお子さんは50%の確率でこの病気になります。 |
6. この病気ではどのような症状がおきますか? |
指定難病のTRPV4異常症の診断基準では、症状として、-3SD以下の体幹短縮型低身長、脊柱変形、四肢大関節の腫大、四肢大関節の拘縮、手指関節の腫大、手指関節の拘縮、尾骨部の皮膚ヒダなどを認めるとされています。 |
7. この病気にはどのような治療法がありますか? |
根本的な治療法はなく、整形外科手な対症療法が中心です。小児期には進行性の下肢および脊柱変形に対する装具療法や手術治療が行われます。また、重症例の変容性骨異形成症では酸素投与などの呼吸管理を要することがあります。脊椎の変形(変形性脊椎症)にともなう腰背部痛だけでなく、著しい脊柱変形や環軸椎不安定性に伴い脊髄症が発症して四肢の疼痛、筋力低下、知覚障害、痙性などを生じることがあります。また、下肢の荷重関節(股・膝・足関節)では加齢とともにしばしば変形性関節症を発症し、当該関節の疼痛、可動域制限やそれに伴う歩行障害により日常生活動作の低下を招きます。変形性脊椎症、変形性関節症ともに早発性のため治療期間は長期化し、薬物治療、理学療法、装具治療など保存的治療に抵抗する場合には手術的加療(脊椎除圧固定術、人工関節置換術など)を要します。 |
8. この病気はどういう経過をたどるのですか? |
TRPV4異常症は疾患が細分化されていて、重症から軽症までさまざまです。変容性骨異形成症の最重症型は胎児死亡や周産期致死となります。また、加齢に伴い変形性脊椎症および変形性関節症は重症化するため、関節機能が失われるとともに移動能力や日常生活動作は低下します。 |
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか? |
首を極端に曲げたり反らしたりすることのないように過度の運動は避けるようにする必要があります。具体的に日常生活がどの程度の制限をされるかは、個々の患者さんによって異なります。 |
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。 |
変容性骨異形成症 |
研究班名 | 先天性骨系統疾患の医療水準と患者QOLの向上を目的とした研究 研究班名簿 |
---|---|
情報更新日 | 令和6年4月(名簿更新:令和6年6月) |