奇形症候群分野|歌舞伎(Niikawa-Kuroki)症候群(平成24年度)

かぶき(Niikawa-Kuroki)しょうこうぐん
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1. 概要

1981年に我が国から発信した原因不明の先天異常症(多発形態異常症候群)。患者の切れ長の目をもつ顔貌が歌舞伎役者の隈取に似ることから命名された。国内外から約400例の報告がある(推定罹病率は1/32,000)。ほとんどが弧発例で家族例は極く少数。

2. 疫学

推定頻度から算出した推計罹患者は約 4,000人

3. 原因

臨床的に歌舞伎症候群と診断された患者の約70%にMLL2遺伝子の変異が認められる。MLL2はヒストンメチル化酵素(H3K4)であり、歌舞伎症候群はヒストンメチル化異常症と考えられる。

4. 症状

(1) 特徴的な顔貌(~100%)
下眼瞼外側1/3の外反・切れ長の眼瞼裂(ほぼ100%),外側1/2が疎な弓状の眉,先端がつぶれた鼻,短い鼻中隔,突出した大きな耳介変形
(2) 骨格系の異常(~92%)
指短縮(特にV指、中節骨短縮),脊柱側弯,椎体矢状裂、肋骨異常など
(3) 軽度〜中等度精神遅滞(~92%)
(4) 生後始まる成長障害(低伸長)(~88%)
(5) 皮膚紋理異常(~90%)
指尖部の隆起(finger pad),指三叉c,dの欠損,小指球部蹄状紋増加など

5. 合併症

易感染性、口蓋裂に続発する中耳炎とその後の伝音性難聴、内臓奇形に伴う種々の合併症など。女児については性早発が時に見られる。

6. 治療法

本質的な治療法はない。種々の合併症に対する対症療法。

7. 研究班

先天性異常の疾患群の診療指針と治療法開発をめざした情報・検体共有のフレームワークの確立