特発性血小板減少性紫斑病(指定難病63)
とくはつせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう
(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)
28歳の女性です。健康診断の時、血小板数が少ないと指摘されました。特発性血小板減少性紫斑病ではないかと心配です
- まず、本当に血小板数が少ないのか、もう一度検査してみて下さい。たまたま採血時の条件で、一見減少しているように見えることがあります。次に、何か常用しているクスリはありませんか?クスリの副作用で血小板数が減ることもあります。その他、さまざまな病気で血小板数が減少することが知られており、それらをすべて除外してはじめて特発性血小板減少性紫斑病が疑われます。また、特発性血小板減少性紫斑病で血小板数が少ないからといって、すぐに治療が必要なわけではありません。出血の症状がなければ、血小板数が3万/μL以上あれば、多くの場合は無治療で経過観察できます。
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特発性血小板減少性紫斑病における生活上の注意点を教えてください。
- 慢性型であれば長期にわたり治療ないし経過を観察する必要のある慢性疾患であるために、まずこの病気と長く付き合う姿勢が必要です。薬物療法を受けている場合には服薬をきちっと行うとともに、説明を受けた薬物治療に対する生活上の注意を守り、副作用が出た場合には主治医に報告してください。高齢者、高血圧、出血を来している場合などでは、過度の肉体労働や運動の制限が必要のこともありますが、血小板数が3万/μL以上であれは、多くは通常の日常生活を制限する必要はありません。精神的にいらいらせず、安眠、快便、に努める事も大切です。
他の科を受診する場合には(例えば歯科での処置や、内視鏡検査時の組織検査、鎮痛薬、血液さらさら薬の使用など)本症であることと、現在の治療薬に関する情報を積極的に提供する必要があります。また、鎮痛薬や解熱薬は血小板の働きをおさえる作用があるものが多いため、使ってよいかどうか主治医に確認してください。
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発病してから15年目現在、血小板数2万4千で治療を猶予しています。気を付けて生活はしておりますが治療はするべきでしょうか?副作用が恐怖に思えて。根本治療にならないのであればステロイドは受けたくないのですが如何でしょうか?
- 治療をするかどうかは血小板数のみで決めるのではなく、出血症状(あざ、歯ぐきからの出血など)や出血を起こし易い要因(血圧が高い、スポーツよくするなど)があるかどうか等、総合的に判断します。そのため、血小板数だけで治療をした方がよいかどうかの判断はできません。何らかの外力が加わらなければ(例えば打撲など)出血しない状況下であれば無治療で経過観察することも一つの方法です。薬剤の副作用とあわせて主治医とよく相談することが必要です。治療についてはもしピロリ菌感染について確認されていないのであれば、最初に確認してもらってください。ピロリ菌の感染がない、或いは除菌療法が無効で、出血傾向が見られるようでしたらステロイドということになります。15年経過していることを考慮するとステロイドを大量に用いるよりは出血傾向や血小板数をコントロールできる少な目の量を使用し副作用の軽減を図る方法もあります。また、ステロイドでの長期的な治療が必要であれば、早めにトロンボポエチン受容体作動薬やリツキシマブを試してみるという方法もあります。いずれにしても主治医の先生とよくご相談ください。
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この疾患は急性、慢性があるとわかりましたが各患者さんがどれくらいらっしゃるかお問合せいたしました。急性は小児に多いと書かれています。特に成人慢性ITPの患者さんの数を具体的に教えていただけないでしょうか?成人での急性、慢性患者さんの割合でも結構です。宜しくお願いします。
- ITPでは自然軽快や脾臓摘出などの治療により完全寛解となる例があるため、その正確な発症率や有病率を調べることはきわめて難しい疾患です。わが国では厚生労働省特定疾患調査表による医療機関からの医療給付申請による受給者数に基づいて疫学的推計が可能となっています。平成23年度の統計では推計で新規発症は急性型1127名(男513名、女614名)、慢性型2306名(男829名、女1479名)です。約19200名の患者さんがITPの病名の更新手続きをしています。急性型の多くは5歳未満に大きなピークが見られました。一方、平成23年に新たに登録申請した慢性型ITPを分析すると、20~40歳に一つのピークがあり、この年齢層では女性が男性の3~4倍多いことがわかります。また70歳代以降にも別のピークがありますが、この年齢層では男女差はなく、ITPの高齢者での発症が増加していることが明らかになっています。
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妊娠、出産の危険性と妊娠の可能性についてお聞きしたいです。妊娠したいと思ったときに準備することはなんでしょうか?また、子どもへの影響はどれくらいでるのでしょうか?
- まず病気が妊娠、出産に及ぼす影響について述べます。病気そのものが妊娠を妨げることはありませんが、血小板が少ない状態での出産は大量の出血の危険を伴います。また、この病気は血液中に存在する血小板に対する抗体(自己抗体)が血小板減少をおこすので、妊娠中に胎盤を通して胎児に移行した抗体が胎児に血小板減少を起こすことがあります(新生児が血小板5万未満になる頻度は約10%と言われています)。そのために母体、新生児ともに出血の危険があるので、出産時に血小板を増やすように治療を調整します。帝王切開の方が安全ということではありませんので、分娩方法については産科の先生とご相談ください。新生児の血小板減少は一時的なもので、多くは無治療で生後2~3週すると正常値に戻りますが、稀に治療が必要になります。いずれにしろ、血小板が少ないときには血液専門の内科医、産科医、小児科医のいる病院での妊娠、出産が必要です。次に治療に用いる薬剤の影響について述べます。妊娠中に100%安全に使える薬はありません。この病気に用いられるステロイドの中でプレドニゾロンは胎盤で大部分が代謝されるために比較的安全なことが知られています。日本人のデータではありませんが、20mg以上を飲んでいると口蓋裂のリスクがわずかに増えるという報告がありますが、それ以外の心配は要りません。副腎皮質ステロイド以外の薬、例えばトロンボポエチン受容体作動薬やリツキシマブは胎児に対する影響がある可能性があり、妊娠中には通常用いません。したがって、妊娠中に安全に使用できる薬はプレドニゾロンとガンマグロブリン大量療法のみとなります。そのため、妊娠を希望される難治性ITP患者に対しては、妊娠前にリツキシマブもしくは脾臓を摘出する治療をお勧めする場合もあります。主治医とよく相談して下さい。
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この病気では血小板が下がらないようにする予防薬はないのでしょうか?定期的に血小板数を検査するだけで血小板が3万以下になるまで無治療で様子をみているだけなのでしょうか?
- 特発性血小板減少性紫斑病は血小板が減少し、その結果として出血の危険が高まる病気です。効率よく完治出来る薬剤がないため、また慢性に経過する病気の性格上、治療の目標は出血を防ぐことになります。血小板数が5万以上あれば通常は出血の危険はほとんどありませんので、治療による副作用を考慮すると、むしろ何も治療しない方が患者さんの生命や社会生活に好ましいと考えられます。そのため、定期的に血小板数と出血症状をみながら経過を観察することになります。但し経過中重篤な出血傾向が現れたり、手術が必要であったり、分娩時、外傷後の出血など止血が必要な場合には一時的にでも血小板を増加させる治療(例えばガンマグロブリン大量療法、血小板輸血など)を必要に応じて行います。一般的に治療に用いる副腎皮質ステロイドは、免疫能の低下、骨粗鬆症、高血圧、糖尿病、胃潰瘍、顔や腹部に脂肪の集まる中心性肥満など多くの副作用があるので、その使用に当たっては慎重にすべきです。最近、胃潰瘍の原因となるピロリ菌という細菌が胃の中に住み着いている患者さんの約半数で、この細菌を除菌することで血小板が増えることが明らかにされました。ピロリ菌の除菌は1週間3種類の抗菌薬を飲むだけで副作用も少ないので、もしピロリ菌が陽性の血小板減少であれば血小板数が5万以上あっても除菌療法を受けるべきです。以上のように、主治医は患者さんの将来を見据えて血小板数が少ないからといってすぐに治療するのではなく、薬の長所と短所を考えて治療時期を見極めようとしています。この点、ご理解頂きたいものです。
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(公財)難病医学研究財団
- 特発性血小板減少性紫斑病患者を対象としてコルチコステロイドによる一次治療に追加するianalumab(VAY736)をプラセボと比較して評価する第 III 相,ランダム化,二重盲検試験
- 一次治療のステロイドで十分な効果が得られなかったか治療後に再発した特発性血小板減少性紫斑病(ITP)患者を対象としてエルトロンボパグに追加する ianalumab(VAY736)をプラセボと比較して評価する第 III 相,ランダム化,二重盲検試験