封入体筋炎(指定難病15)
1.封入体筋炎とは
封入体筋炎(Inclusion Body Myositis:以下IBM)は主に50歳以上で発症する慢性の経過をとる筋疾患の一つです。大腿部や手指の筋肉が萎縮し、筋力が低下するため、階段が登りにくい、指先で物がつまみにくいと言ったような症状で発症します。診断には筋生検が必要で、骨格筋には縁取り空胞と呼ばれる特徴的な封入体が見られ、名前の由来になっています。ステロイドの治療に反応しないことが多く、治療法が確立されていません。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
厚生労働省難治性疾患政策研究事業「希少難治性筋疾患」班の平成21年度の調査では、日本には1,000-1,500人のIBM患者がいると推定されましたが、国立精神・神経医療研究センターにおける筋病理件数、そのうちの炎症性筋疾患、IBMと診断のついた割合から推定される患者数はおよそ3,700人程度、有病率は30.8人/100万人となり、海外における有病率とほぼ同等と考えられます。
3. この病気はどのような人に多いのですか
主に50歳以上の中高年の方に多い病気です。やや男性が多い傾向にあります。
4. この病気の原因はわかっているのですか
わかっていません。病理学的には 炎症 と 変性 という二つの病態が考えられていますが、原因は不明です。
5. この病気は遺伝するのですか
稀に家族内で同じ病気の方がいらっしゃる場合もありますが、原則的には遺伝性はありません。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
大腿部や手指の筋肉が萎縮し、筋力が低下するため、階段が登りにくい、指先で物がつまみにくいと言ったような症状で発症します。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
残念ながら有効な薬物療法は確立されていません。多発筋炎・皮膚筋炎で有効なステロイドはIBMにおいては筋力の回復は見られません。他の免疫抑制剤も効果が確立されているものはありません。根本的な治療が無い現状では、運動療法・作業療法などのリハビリテーション、歩行時の膝折れ防止や杖などの装具の活用が推奨されます。また2016年から 本疾患を含む8つの神経・筋疾患に対して 歩行リハビリテーションとしてHAL医療用下肢タイプによる「歩行運動処置」が保険適用となっています。 嚥下 の問題に関しては食事内容の適宜変更や 胃瘻 造設などで対応します。輪状咽頭筋離断術やバルーンカテーテルによる輪状咽頭部拡張法(バルーン拡張法)もIBM患者での嚥下障害改善に有効な可能性があります。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
平均余命に影響を与えるという明確な証拠はありませんが、進行する筋力低下による歩行障害と嚥下障害が主な障害として重要です。個人差がありますが、進行性で5~10年で車椅子生活となります。
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
嚥下障害に伴う誤嚥性肺炎や、起立歩行障害による転倒・骨折にも注意が必要です。
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
該当する病名はありません。
研究班名 | 希少難治性筋疾患に関する調査研究班 研究班名簿 |
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情報更新日 | 令和6年10月(名簿更新:令和6年6月) |