進行性多巣性白質脳症(PML)(指定難病25)

しんこうせいたそうせいはくしつのうしょう(PML)

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

なぜこのような珍しいウイルスの病気が起こるのですか?(発症機序)

このウイルス(JCウイルス)は通常何の症状も起こさず、腎臓や血液細胞に持続感染していると考えられています。様々な原因で免疫力が低下すると、ウイルスが活性化し脳に侵入、そこで増殖して脳の組織を障害します。障害された脳の部位により、多彩な症状が現れます。ただし、すべての免疫不全の方がこの病気になる訳ではありません。免疫不全以外の発症誘因についてはあまり分かっていません。

この病気を診断することは難しいですか?(診断)

症状だけで診断することは出来ませんので、頭部MRI等の画像所見がPMLを疑う上で非常に参考になります。診断を確定するには脳脊髄液を用いたJCウイルスDNA遺伝子検査が非常に有用です。ただし、この検査の特異度は99%ですが、感度は80%程度のため、脳の病変部を少し取って顕微鏡で診断すること(脳生検)が最終的に必要になる場合もあります。

脳の一部を取っても大丈夫ですか?(確定診断)

現在は脳神経外科の技術が非常に進歩しており、検査で脳の一部を取ることによる障害は通常ほとんどありません。

ウイルス疾患ならばワクチンは無いのですか?(予防と治療)

JCウイルスおよびPMLに対するワクチン開発は難しい問題が多く、現在開発中のワクチンはありません。近縁のウイルス性疾患でポリオーマウイルス腎症があり、こちらに対する抗体製剤の臨床試験が始まっており、近縁疾患のワクチン開発に関連する研究として期待されています。

この病気になるとどうなりますか?(予後)

HIVを基礎疾患としたPMLの中央生存期間は1.8年、その他の疾患を基礎疾患としたPMLは中央生存期間が3ヶ月とされています。生命予後が非常に悪い疾患です。死亡を免れても大部分の患者さんは重篤な脳の障害を残します。

この病気の人に接すると感染しますか?(感染性)

JCウイルスは多くの人が、PML患者さん接すること以外の普段の生活の中で無症状で感染していると考えられています。PMLを発症している人が有意に感染性ウイルスを輩出して感染伝播の中心になっているというデータはありません。PML患者さんと接することで、新たなJCウイルスに感染することはなく、またPMLが新たに発症する(うつる)わけではありません。


情報提供者
研究班名プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日令和5年11月(名簿更新:令和6年6月)