球脊髄性筋萎縮症(指定難病1)

きゅうせきずいせいきんいしゅくしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

球脊髄性筋萎縮症では筋力の低下以外にどのような症状が起きますか?

筋力低下を初めて自覚する時期は30〜60才が多いですが、手指の振戦(ふるえ)や有痛性筋痙攣(こむら返り)などがしばしばこれに先行します。経過中、喉頭痙攣(短時間の呼吸困難感の発作)や寒冷麻痺(寒冷で増強する運動症状)を自覚することもあります。また、随伴症状として、女性化乳房を高率に認めるほか、発毛の減少、皮膚の女性化、睾丸萎縮などのアンドロゲン(男性ホルモン)の不全症状がみられます。また、重篤な不整脈を起こしうるBrugada症候群と同じ心電図の異常を伴うことが知られています。

球脊髄性筋萎縮症はどのように診断するのですか?

筋力低下、振戦などの症状、緩徐進行性の経過、針筋電図の結果などから判断します。また、男性ホルモンの働きに関与するアンドロゲン受容体遺伝子の「CAG」という遺伝暗号の並びの繰り返し回数を調べる遺伝学的検査の結果も診断の根拠の一つとなります。血液検査では血清クレアチンキナーゼの異常高値や肝機能異常、血清クレアチニンの低値を示すことが多く、病気の発見のきっかけとなることが少なくありません。

新しい機器による歩行リハビリテーションについて教えて下さい。

新しい機器を用いた歩行リハビリテーションとして、HAL医療用下肢タイプが医師主導治験で得られた有効性と安全性データから医療機器承認を受け、2016年に球脊髄性筋萎縮症を含む神経・筋8疾患*に対して行う「歩行運動処置(ロボットスーツによるもの)」として保険適用となりました。現在は導入された医療機関での使用に限られていますが、歩行機能を改善する効果が得られています。(*緩徐進行性の神経・筋疾患により歩行機能が低下した患者を対象とする。対象となる緩徐進行性の神経・筋疾患患者は、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、 シャルコー・マリー・トゥース病、遠位型ミオパチー、封入体筋炎、先天性ミオパチー、筋ジストロフィー)

球脊髄性筋萎縮症の患者に有効な薬物治療を教えてください。

球脊髄性筋萎縮症に対する薬物治療として、リュープロレリン酢酸塩が2017年8月に薬事承認され保険適用となっています。リュープロレリン酢酸塩を投与するためには、遺伝学的検査による確定診断が前提になるので、薬物治療を検討する場合には、早めに遺伝学的検査を実施する必要があります。ほてりや男性性機能不全などの内分泌系副作用、骨粗鬆症などの筋・骨格系副作用の他、抑うつ状態などが副作用として報告されているため、処方医との間で十分に情報を共有する必要があります。

 

情報提供者
研究班名 神経変性疾患領域における難病の医療水準の向上や患者のQOL向上に資する研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和6年6月)