先天性筋無力症候群(指定難病12)
1. 「先天性筋無力症候群」とはどのような病気ですか
神経から筋肉へ命令が伝わる部分を神経筋接合部と言い、すべての骨格筋(手足や体を動かす筋肉)にあります。この神経筋接合部には多数のタンパクがそれぞれ重要な役割を果たしています。このタンパクのひとつを生まれつき持たない、または、ひとつのタンパクの機能に障害があると、神経筋接合部の信号の伝達がうまくできなくなります。つまり、運動神経の筋肉を動かしなさいという命令が神経筋接合部で途切れることになります。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
19歳以下では約10万人にひとり、全人口では約50万人にひとりです。日本では190名から270名がいると推定されますが診断をされているのは30名ぐらいです。この病気は診断が難しく世界でも日本でも未診断の患者さんが多いと言われています。
3. この病気はどのような人に多いのですか
男女差はありません。生まれた時に泣き声が小さかったり、母乳を飲む力が弱かったり、時には自分でうまく呼吸ができなくて機械で呼吸の補助をする必要があることもあります。しかし、生まれた時のこれらの症状は必ずしも出るものではありません。また、生まれた時のこれらの症状がすぐに軽くなり幼稚園から大人までの幅広い期間で筋肉の力が弱いことに気づくことがあります。
4. この病気の原因はわかっているのですか
神経筋接合部のタンパクをつくる遺伝子の塩基が変わること(塩基置換)が原因です。
5. この病気は遺伝するのですか
はい。ほとんどの先天性筋無力症候群は潜性遺伝(劣性遺伝)ですから、父方と母方の両方の遺伝子の塩基置換がある時だけに発症します。顕性遺伝(優性遺伝)をする先天性筋無力症候群もあります。顕性遺伝(優性遺伝)の場合には、父方と母方のいずれか一方の遺伝子に塩基置換があるだけで発症します。父親にも母親にも存在しない塩基置換が子供で新たに起き顕性遺伝(優性遺伝)塩基置換となることもあります。特に顕性遺伝(優性遺伝)の場合には幼小児期には症状が全くなくて大人になってから症状がでることが多いです。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
手足・顔・体幹(胸や腰)の筋肉に力が入らなかったり筋肉が疲れやすくなったりします。眼を動かす筋肉やまぶたを上げる筋肉にも同じような症状がでます。また食べ物をかむ力や飲み込みが悪くなることもあります。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
多くのタイプで重症筋無力症に対する薬剤と同じ薬剤が効果があります。一方、重症筋無力症の薬剤が症状を増悪させることもあります。小さいころに夜間に突然に呼吸困難になるタイプがありますので呼吸モニターをつけて寝ることが必要です。飲み込みが悪い時には食べ物が肺に入らないように注意が必要です。重度の側弯症に対してはギプスや手術が必要になることがあります。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
一般に年を取るととともに悪くなることはないのですが、タイプによってまた人によって悪くなることもよくなることもあります。
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
過労をさけてください。多くのタイプでは入浴などで体温が上がると筋力低下が悪くなりますが、体を温めた方がよいタイプもあります。
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
終板アセチルコリン受容体欠損症、
スローチャンネル症候群、
ファーストチャンネル症候群、
ナトリウムチャンネル筋無力症、
終板アセチルコリンエステラーゼ欠損症、
発作性無呼吸を伴う先天性筋無力症 、
エスコバー症候群、
致死的多発性翼状片症候群、
胎児無動変形シークエンス、
先天性ランバートイートン筋無力症候群。
これらはいずれも先天性筋無力症候群の中に含まれます。
研究班名 | 希少難治性筋疾患に関する調査研究班 研究班名簿 |
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情報更新日 | 令和6年10月(名簿更新:令和6年6月) |