特発性拡張型心筋症(指定難病57)
とくはつせいかくちょうがたしんきんしょう
- 病院での医師による定期的な診察のみならず、自宅で体重・血圧・脈拍などを毎日記録することは、ご自身の日々の体調を確認する上でとても重要です。特に体重の変化に気を配ることはとても重要で、短期間(例えば1週間)で体重が2~3kg増えた場合は心不全が悪化した可能性が疑われますので、息切れやむくみなどの自覚症状がないか確認するとともに、塩分を少なめにし、体に負担のかかる運動を控える必要があります。もし症状が強い場合や体重が回復しない場合は、早めに病院を受診することが勧められます。
この病気とうまく付き合っていくために、日常生活で気をつけるべきことは何ですか?
- 拡張型心筋症の場合、心臓が拡大し心臓の収縮が低下し、心不全を引き起こします。このことに、体の中の様々なホルモンの増加が関わっており心臓に悪影響を及ぼすことが知られています。これらのホルモンを抑制することで、心不全の悪化を防いだり、心臓の形や機能を改善させたりすることが知られています。アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、サクビトリルバルサルタン、β遮断薬、アルドステロン拮抗薬などの薬剤は心臓に対する保護作用を有することが証明されています。これらの薬剤は高血圧の薬として日常の臨床でもしばしば用いられていますが、拡張型心筋症の患者さんでは血圧を低下させる目的で処方されているのではありませんので、服用を継続することが大事です。中断すると心不全が悪化することがありますので、要注意です。低血圧による症状がある場合には、主治医と相談してください。
拡張型心筋症と診断され、複数の薬が処方されましたが、血圧を下げる作用があると薬の説明に記載されています。血圧はこれまで全く高くなったことがなくむしろ低めですが、服用する必要があるのでしょうか?
- 心不全が悪化し症状が強い状態では運動を制限する必要があります。しかし、状態が落ち着いた場合は、無理のない程度のいわゆる「有酸素運動」を定期的に行うことにより生活の質(QOL)や生命予後(寿命)が延長することが分かっています。具体的にどの程度の運動をしたらよいかは、心肺運動負荷検査を行い決定します。また運動中の自覚症状を指標に運動量を決定することもありますが、いずれの場合も専門医を受診し指示に従って安全に行う必要があります。
心不全の場合運動は制限されるとのことですが、一方で運動をした方がいいとも言われています。具体的にどのような運動を行ったらいいのでしょうか?
- 心臓移植は薬物治療や非薬物治療を行っても病状が進行し症状が改善せず、その後も改善の見込みがない場合に検討されますが、すべての方が心臓移植対象となるわけではありません。我が国の基準(適応基準)に準じて心臓移植の検討が行われます。
拡張型心筋症の末期状態では心臓移植が検討されるとありますが、具体的にどのような場合に必要となるのでしょうか?
- 心臓の病気の中には、ベッカー型筋ジストロフィなどの明らかな原因があって、見た目は拡張型心筋症と類似した心臓の異常を引き起こす病気(特定心筋症)があります。(特発性)拡張型心筋症と診断する際には、この特定心筋症がないことを確認する必要があります。患者さんの場合は、ベッカー型筋ジストロフィによる特定心筋症と考えられますので、拡張型心筋症には該当しないことが予想されますが、念のため主治医にご確認ください。
私はベッカー型筋ジストロフィを患っていますが、心臓の機能が低下して、左心室は拡張しています。主治医には、ベッカー型筋ジストロフィが原因で心臓の機能が低下しているといわれています。私の病名は拡張型心筋症に当てはまるのでしょうか?
- 心臓の機能が低下すると、心臓内の血流がうっ滞することで血の塊(血栓)が生じることがあります。血栓が心臓から全身に送り出されることで塞栓症が生じます。脳の血管がつまると脳梗塞、心臓の血管がつまると心筋梗塞が発症します。その他、様々な部位を閉塞させる可能性があります。
拡張型心筋症で塞栓症が起こる場合があるとありますが、具体的にどのような原因でどのような症状がおきるのですか?
- 日本心臓リハビリテーション学会のホームページ (https://www.jacr.jp/everybody/hospital/) で心臓リハビリテーションを受けられる施設を確認することが可能です。但し、心臓リハビリテーションの適応があるかどうかも含めて、まずは主治医に確認して頂くことをお勧めします。
私が通院している病院は心臓リハビリテーションを行っていない施設ですが、心臓リハビリテーションに興味があります。近隣の病院で心臓リハビリテーションを行っている施設がないか確認する方法はありますか?
研究班名 | 特発性心筋症の診断・ゲノム情報利活用に関する調査研究班 研究班名簿 |
---|---|
情報更新日 | 令和5年11月(名簿更新:令和6年6月) |