那須・ハコラ病(指定難病174)
1. 「那須・ハコラ病」とはどのような病気ですか
那須・ハコラ病は、わが国の那須毅博士とフィンランドKuopioのPanu Hakola博士により、1970年代にほぼ同時に発見された脳と骨の病気です。骨には 嚢胞 (のうほう)と呼ばれる空洞の構造が出来て、骨折しやすくなります。脳は大脳の白質(はくしつ)と呼ばれる場所が 変性 (へんせい)を起こして、正常な脳の機能が妨げられるようになります。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
平成21年度に研究班が全国の神経内科・精神神経科・整形外科4071施設を対象に施行したアンケート調査の結果では、日本では約200人と推定されました。
3. この病気はどのような人に多いのですか
患者さんは日本と北欧に集積していますが、世界中に広く分布しています。成人期以降に発症し、小児の患者さんは報告されていません。
4. この病気の原因はわかっているのですか
脳や骨の働きに重要なDAP12(TYROBP)遺伝子またはTREM2遺伝子の変異 (へんい)が原因となります。
5. この病気は遺伝するのですか
常染色体潜性遺伝(劣性遺伝) (じょうせんしょくたいせんせいいでん(れっせいいでん))と呼ばれる遺伝形式を示す遺伝性の疾患です。患者さんのご両親や子供は通常発病しませんが、ご兄弟で同じ病気を発症することがあります。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
骨の症状としては、頻発する骨折や骨の痛みです。ささいな外傷でも手足を骨折しやすい特徴があります。脳の症状としては、人格の変化、精神の変調やてんかん発作が見られ、進行すると認知症を発症します。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
病気自体に有効な治療法は現在のところありません。骨折に対しては整形外科的治療、精神症状に対しては抗精神病薬の投与、てんかん発作に対しては抗てんかん薬により治療されます。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
20歳代頃から骨折を繰り返し、30歳代頃から精神神経症状が見られ、40歳代頃から認知症を発症します。病気が進行すると、寝たきり状態となります。年余にわたり、緩徐進行性の経過を示します。
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
骨折を防ぐために打撲や転倒しないように留意しましょう。脳の症状として、判断力が低下することもありますので、介護者のサポートが必要になることがあります。寝たきり状態になった場合は、床ずれが出来ないように注意してください。
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
Polycystic lipomembranous osteodysplasia with sclerosing leukoencephalopathy (PLSL)
11. この病気に関する資料・関連リンク
なし
用語解説
骨嚢胞(こつのうほう):上腕骨や大腿骨など長い骨の骨端部に出来る輪郭明瞭な空洞で、薄い骨梁(こつりょう)で囲まれ、内部に脂質が充満している構造物です。
白質脳症(はつしつのうしょう):脳や脊髄では、神経線維が集積している部位を白質(はくしつ)と呼びます。白質は例えて言えば電線として働く 軸索 (じくさく)や絶縁体として働く髄鞘(ずいしょう)を豊富に含んでいます。何らかの原因でこれらが傷害されると軸索変性(じくさくへんせい)や 脱髄 (だつずい)を来たし、神経細胞間の連絡がスムースに行われなくなります。
研究班名 | 成人発症白質脳症の実態調査とレジストリ作成の研究班 研究班名簿 |
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情報更新日 | 令和4年12月(名簿更新:令和6年6月) |