特発性間質性肺炎(指定難病85)

とくはつせいかんしつせいはいえん
 

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特発性間質性肺炎の医療費助成の対象となる条件を教えてください。

特発性間質性肺炎の患者さんが、医療費助成を受けるための認定基準を満たすには、まず、間質性肺炎があって、その原因が不明であることが必要となります。つまり、特発性間質性肺炎としての確実な診断を受けていることが前提条件となります。
重症度は、安静時の動脈血酸素分圧および6分間歩行時の経皮的酸素飽和度によってⅠ〜Ⅳ度の4段階に分類されます。これまでは重症度分類Ⅲ・Ⅳ度に該当する場合にのみ医療費助成の対象となっていましたが、平成26年5月に「難病の患者に対する医療等に関する法律」が成立し、平成27年1月から新たな難病医療費助成制度が始まりました。新制度では重症度分類がⅠ〜Ⅱ度に該当する場合にも一定の基準を満たせば助成の申請が可能になりました(軽症高額制度)。ただし、助成認定の判断は各都道府県・指定都市が行いますので、詳細については各都道府県・指定都市の担当窓口でご相談ください。

「原因不明」と「特発性」とは異なるものでしょうか?

特発性とは「原因が現時点で不明である」とほぼ理解してよいと思います。原因不明の間質性肺炎が「特発性間質性肺炎」であり難病法の指定難病ですから、正確な診断を受けた上で、重症度や軽症高額制度の条件を満たせば医療費の自己負担の軽減の申請ができます。住所地管轄の担当機関から申請書類を取り寄せ、難病の指定医療機関にいる指定医の先生に記載してもらって手続きをなさって下さい。

感染症は間質性肺炎を悪化させるきっかけとなるため、風邪に気を付けるようにいわれたのですが、具体的な対策を教えてください。

新型コロナウイルスやインフルエンザはもちろん一般的な風邪様症状にも十分注意する必要があります。予防接種は、感染症の重症化を予防することが期待されますので主治医の医師とご相談してみてください。
一般的には人ごみの多いところに外出することを避けるようにして、マスクを着用し手洗いやうがいをしてください。部屋の湿度にも気を付け、乾燥しすぎないようにしてください。また、栄養と睡眠を十分にとるようにしてください。感冒などの感染症に罹ったあとに、急速に呼吸困難が悪化する「急性増悪」をおこすことがあります。「急性増悪」は重篤な状態で、生命の危険もありますので、そのような場合は直ちに医療機関を受診してください。

肺癌後の放射線肺炎は医療費の助成の対象にはならないのでしょうか?

放射線肺炎は原因が特定し得ない間質性肺炎ではないので特発性間質性肺炎には入っていません。

特発性肺線維症と診断されている高齢の父親に肺がんも見つかりました。治療はどのようにすればよいのでしょうか。

肺線維症や間質性肺炎があると、抗がん剤や放射線治療などのがん治療で病態が悪化する可能性が高いことが知られています。肺癌の手術後にも急激に状態の悪化(術後急性増悪)がおこるリスクがあるため、主治医の医師はとても慎重になります。治療方針についてはリスクを含め主治医の医師と十分にご相談ください。

間質性肺炎患者は喫煙や飲酒をしてもいいのでしょうか?

特発性肺線維症の患者さんの多くは過去に喫煙を経験しており、喫煙は特発性肺線維症(IPF)の「危険因子」であると考えられています。また喫煙によって病気が進行することが多く、喫煙されている方は強く禁煙をお勧めします。飲酒については通常量の飲酒であれば問題ありません。

間質性肺炎患者は運動してもいいのでしょうか?

一般的に過度にならない程度の運動は行ってください。在宅酸素療法を受けている方でも、足の筋肉や呼吸筋を強くする専門的なプログラム(呼吸リハビリテーション)は歩行時の息切れ感を軽くします。ただし、運動中に心臓に負担がかかるほどの酸素不足になっている可能性もあります。理想的には、指先(経皮的に)で動脈血の酸素飽和度が測定できる小さな機器(パルスオキシメーター)で示される値が90%以上であることを確認しながら、歩行などの運動を続けることをおすすめいたします。酸素飽和度が90%以下のときには運動を休み、回復してからまた始めて下さい。特発性間質性肺炎や呼吸器機能障害の認定を受けて基準を満たしている場合には、パルスオキシメーターを購入する際に助成制度がある市区町村もありますのでご確認ください。

間質性肺炎患者は飛行機に乗れるのでしょうか?

飛行中機内では気圧が下り、酸素分圧も下がるため、乗客の血中酸素濃度も低くなります。飛行機による移動が必要なときには、旅行会社から診断書を取り寄せ、主治医に相談して、必要であれば機内で酸素を吸入するような手続きをとりましょう。またマスク着用などで機内における感染対策も重要です。

間質性肺炎患者はどんな病気が合併しやすいのでしょうか?

間質性肺炎の合併症には肺がんがあり、発生率は10-30%程度と言われています。間質性肺炎のために定期的な診察を行っていても間質性肺炎による異常陰影に隠れて肺がんの発見が遅れる可能性があり、CTによる注意深い観察が必要です。その他に、気胸や縦隔気腫、肺高血圧症、心不全、感染症などを合併することがあります。

「気腫合併肺線維症」について教えてください。

タバコ煙などにより肺が壊れて拡がってできる肺気腫(今ではCOPDの一部として知られています)病変が、間質性肺炎/肺線維症患者さんの肺に同時に存在し、症状・呼吸機能検査・画像所見により発見される症候群です。多くは喫煙歴のある患者さんで、上肺野に気腫病変が、下肺野に線維化病変が様々な程度におきています。肺癌や肺高血圧を合併することも少なくなく、進行すれば日常生活などでも息切れを強く感じることになります。一般の肺機能検査や胸部X線検査だけでは診断が難しいので、診断が遅れることもあります。診断基準や治療指針はまだ定まっていませんが、気管支を拡張させる薬剤とともに間質性肺炎に対する治療も行います。

 

情報提供者
研究班名 びまん性肺疾患に関する調査研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和5年10月(名簿更新:令和6年6月)