副腎皮質刺激ホルモン不応症(指定難病237)

ふくじんひしつしげきほるもんふおうしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1.副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)不応症とは?

副腎皮質からはコルチゾール、アルドステロン、副腎アンドロゲン(dehydroepiandrosterone,DHEAなど)に代表されるステロイドホルモンが産生されています。これらのステロイドホルモンのうち、特にコルチゾールと副腎アンドロゲンは、副腎皮質刺激ホルモン(adrenocortocotropin, ACTH)から刺激を受けて、その合成と分泌が刺激されています。この病気は、ACTHに対する副腎皮質の 反応性 が先天的に欠如または低下しているために、グルココルチコイドと副腎アンドロゲンの分泌が障害され、副腎不全を起こします。アルドステロンはACTH以外にレニン-アンジオテンシン系の調節も受けるため、この病気におけるアルドステロンの合成、分泌はある程度、保たれています。この病気は 先天性 副腎皮質不応症、単にACTH不応症、あるいは 家族性 グルココルチコイド欠損症(Familial glucocorticoid deficiency)と呼ばれることがあります。

2.この病気の患者さんはどれくらいいるのですか

正確な頻度は不明ですが、平成22年度厚労省報告(対象調査期間:2003年1月−2007年12月)によれば、一次調査の患者数44名(男性27名、女性17名)、全国推定患者数は65人と報告されています。

3.この病気はどのような人に多いのですか

新生児期に発症することは比較的少なく、大部分は乳幼児期に発症します。しかし年長児での発症もあります。

4.この病気の原因はわかっているのですか

この疾患の原因は、ACTHの反応に関わる遺伝子の変異により生じると考えられています。ただACTH不応症が疑われる全ての患者さんで遺伝子の変異がみつかるわけではありません。ACTH不応症の一部にACTH受容体をコードするMC2R(melanocortin-2 receptor)遺伝子変異が 同定 されます。またMC2R accessory protein (MRAP)というMC2R遺伝子の働きをサポートする蛋白の機能低下も報告されています。しかしMC2R,MRAP遺伝子変異がみつかる症例はACTH不応症の50%以下であり、それ以外の原因も存在します。最近、 ミトコンドリア の抗酸化系 酵素 であるNNT(nicotinamide nucleotide transhydrogenase)やTXNRD2(thiredoxin reductase 2)の機能低下によってもACTH不応症と同じ病態が起こることが明らかにされています。まれな病態としてACTH不応症にアカラシア、無涙症を合併するAllgrove症候群(Triple A症候群)という病態が知られています。

5.この病気は遺伝するのですか?

原因となる遺伝子がみつかっている場合、その遺伝子の遺伝形式に従って遺伝することがあります。一般には常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式をとります。両親が保因者である場合、そのお子さんが罹患者になる可能性は1/4になります。
原因となる遺伝子がみつかっていない場合でも遺伝する可能性があると考えられます。

6.この病気ではどのような症状がおきますか

新生児期発症の場合は嘔吐、哺乳不良、痙攣、新生児 黄疸 が見られます。乳幼児期には低血糖による痙攣、意識障害、全身状態不良がきっかけで、この病気が診断される場合が多く、感染症がその誘因となることもしばしばです。ACTH過剰による皮膚色素沈着は生後1ヶ月ごろから徐々に目立つようになります。ACTH受容体機能不全の場合には治療前は高身長であり、糖質コルチコイド補充により正常化することが報告されています。

7.この病気にはどのような治療法がありますか

急性副腎不全の発症時には、グルココルチコイドの速やかな補充と、水分・糖分の補給が必要であり、治療が遅れれば生命にかかわります。その後も生涯にわたりグルココルチコイドの補充が必要です。治療が軌道に乗った後も、発熱などのストレスにさらされた際には副腎不全を起こして 重篤 な状態に陥ることがあるため、ストレス時にはグルココルチコイドの内服量を増量して服用します。

8.この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか?

医師から処方されるグルココルチコイド製剤を内服いただければ、通常の日常生活を送ることができます。ただ、発熱、嘔吐や大きな外傷など、身体が強いストレスにさらされた際には、通常内服のグルココルチコイド量では足りなくなることがあり、副腎不全を起こして重篤な状態に陥ることがあります。ストレス時にはグルココルチコイドの内服量を通常の3倍ないしは決められたストレス量(ヒドロコルチゾンで体表面積あたり60mg/日程度)を服用する必要があります。

9. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

この病気に含まれる疾患として、以下の病名があります。家族性 グルココルチコイド欠損症(Familial glucocorticoid deficiency)、Allgrove症候群(Triple A症候群)、ACTH不応症。

 

情報提供者
研究班名 副腎ホルモン産生異常に関する調査研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和6年6月)