潰瘍性大腸炎(指定難病97)
かいようせいだいちょうえん
(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)
普段の生活で食事などどのようなことに気をつけたらよいのでしょうか?
- 疲れを残さないように十分な睡眠をとり、規則正しい生活が重要です。食事や運動に関しては症状が治まっていれば(寛解)、特別な制限はありません。また、カフェインの含まれている飲料も症状の増悪時(再燃)でなければ、節度ある飲用であれば問題はありません。
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普通の生活ができますか?
- この病気は慢性疾患ですが、平均寿命は一般の人と比べて変わりません。患者さんは薬を長く飲み続けたり、時折入院を必要としますが、普段通りの生活を続けることができます。薬物治療を続けることは潰瘍性大腸炎の悪化を予防できることがわかっていますので、症状がなくても自己判断でお薬を中止するのではなく、主治医の先生に相談することが大切です。
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普通の女性と同じように妊娠・出産できますか?
- 通常、同じと考えてよいでしょう。潰瘍性大腸炎の患者さんと一般女性との妊娠率には差がないと報告されており、同じように正常分娩で健康な赤ちゃんを出産しています。ただ外科手術(全大腸摘出術)を受けた女性では自然妊娠率が下がることが報告されていますが、これは手術の影響で卵管等に癒着が生じたりすることで起こるもので、人工授精は可能です。男性患者さんの場合はサラゾピリンを服用していると、この薬による精子形成の抑制が起こるため、一時的に男性不妊の状態になります。妊娠を希望する場合、5-アミノサリチル酸(5-ASA)に切り換えるとよいでしょう。
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精神的な要因でこの病気が起こったり、悪くなったりしますか?
- まず、この病気は精神的なものが原因で発症することはありません。しかし、心と体は分離できませんので、肉体的、精神的なストレスで腹痛や下痢と言った再燃症状を惹起することは否定できません。ストレスはあらゆる病気で症状を悪化させる要因の一つです。
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旅行する時の注意点を教えてください
- 特に長期間の旅行に際しては、主治医に相談してください。あなたの服用している薬の名前を覚えて、薬が十分あるかも確認してください。海外旅行の時はその薬の一般名を書きとめて下さい。
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この病気の合併症を教えてください
- 大きく分けて腸管に起こる合併症と腸管外に起こる合併症があります。腸管の合併症には、大出血、中毒性巨大結腸症、穿孔や長期の経過中に起こる狭窄や癌などがあります。腸管外の合併症には、関節の痛み、皮膚症状、目の痛み、肝機能障害などが代表的なものです。
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この病気は完治するのですか?
- 残念ながら、この病気の原因が解明されていない現在では完治する治療法はありません。しかしながら、規則正しい生活とお薬の服用で長期間にわたり寛解を維持し、発病前と同じような生活をしている患者さんはたくさんおられます。
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症状がなくても内視鏡検査は必要でしょうか?
- 症状がなくてもある程度定期的な内視鏡検査が必要です。内視鏡検査はあなたの大腸の状態(炎症の程度や拡がり)を的確に把握できます。内視鏡検査で得られる情報は、症状がない寛解期でも治療内容の変更やお薬の中止などを判断するために重要となります。また、発病してから7~8年以上経過した全大腸炎型の患者さんは癌化の危険性もありますので、少なくとも1~2年に1回の検査が必要となります。
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海外と国内では治療法が異なるのでしょうか?
- 海外と国内でこの病気に対する治療法は大きく変わりません。基本的には5-ASAを基準薬として、このお薬で対処できない場合や炎症が強い場合にはステロイドを組み合わせて使用します。多くの患者さんはこの組み合わせで炎症はおさまります(寛解)が、この治療法でも炎症が沈静化しない場合やステロイドをやめると症状が悪化する患者さんには、免疫抑制薬などの内科治療を行います。
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現在症状はありません。お薬はいつまで続けなければなりませんか?
- 発病してから数年間、再燃しない患者さんもおられますが、通常、多くの患者さんは再燃と寛解を繰り返します。従って、症状がなくても寛解を維持するために5-ASAを続けるのが原則です。特に5-ASAは長期に服用することの安全性は確認されていますし、さらに合併症の大腸がんを予防することが近年報告されています。もし、内服薬を中止したいなと思ったときは必ず主治医と相談するようにしましょう。
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薬を飲まずに10年以上も悪化しないということもありますか?
- 潰瘍性大腸炎の経過は人それぞれですので、不思議ではありません。しかし、内服の有無にかかわらず、一度よくなってから、長期に悪化しない方では、診断を考え直してみてもよいと思います。診断は必ずしも簡単ではないため、別の疾患(例えば腸管感染症など)が初発の時点で潰瘍性大腸炎と診断されることは稀ではありません。また、本当に潰瘍性大腸炎であれば、たとえ症状がなくても、大腸がんの検査のための定期的な大腸内視鏡検査が必要になります。
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